【Vol.321】エスカレーターの分水嶺

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 分水嶺というのがあります。このBP通信の第18話(2003年)にも書いたことがありますが、分水嶺とは、河川の源流が山脈の頂点を境に分かれるところです。

 地方に行って鉄道やバスで移動するとき、山越えするところが分水嶺であったりすると、私は嬉しくてたまりません。

 昔、分水嶺は国境線となっていた場合が多く、その峠の名前があちこちに残っています。きっと、昔の人はその峠を越えるとき、ああ、これで異国に出る(入る)のだと、気持ちを切り替えていたのでしょう。

 このように、分水嶺とは、国と国、あるいは地域と地域の境目でしたから、そこを境目にして法律や文化、言語(方言)が変わったのでした。まさに異国の境界だったのです。

 その、分水嶺的なことがエスカレーターにもあるのです。

 いきなり、エスカレーターの分水嶺と言われてもビックリされると思いますが、私にはそう映ります。

 ご存知でしょうか。関西、特に大阪に行きますと、エスカレーターに止まって乗る人は殆どすべての人は右側に乗ります。歩く人は間違いなく左側を歩いて上がり、歩いて下がるときも進行方向左側を歩きます。

 関東は真逆でして、歩く人は右側で、上がるときも下がるときも同じです。

 どうでもよい話と言えばそうですが、一体、なんでそのようになったのか、そして、どのあたりを境目に右と左に分れるのか、それを知りたいとは思いませんか。

 エスカレーターの分水嶺とは、この、歩くときに右なのか左なのか、そうしている地域はどこからか、それを言うのです。 (キリッ!)

 そして私は、これまでの数十年間、この謎に取り組んできたのです。(笑)

 さて、結論を言いますと、エスカレーターの分水嶺が明確なのは名古屋でして、その西側には緩衝地帯と言うか、はっきりしないところがあり、それは京都までの地域です。

 つまり、大阪は絶対に左歩きですが、京都は右左が混ざっておりまして、誰かが左右いずれかに立ち止まれば、以下、皆がそうなります。

 名古屋から関東に至る地域は絶対に右歩きでして、名古屋から中部、北陸、関東、東北、北海道まで同じです。

 一方、大阪から関西、中国、四国、九州はと言いますと、実は、大阪と兵庫くらいまでが左歩きで、その先は九州・沖縄まで関東と同じ右歩きです。

 要するに、右歩きは関西周辺に限られていて、しかも、京都に行けば混在ですので、極めて狭い範囲が左歩きと言うことになります。

 そして最近、非常に面白いことに気づきました。

 先日、新大阪のホームに着いた時です。私たちが乗った新幹線は東京始発の早朝便でしたので、乗客はほとんど東京(関東)の人ですから、何と、ホームに降りてエスカレーターに乗って降りるとき、殆どの人が右歩きをしたのです。

 そして、これまた何と、大阪から乗ろうとしている人がエスカレーターに乗って上がるのを見ると、殆どの人が左を歩いていたのでした。

 
 私は、小躍りするくらい、嬉しく思いました。これは大発見です。大袈裟かもしれませんが、関東の人は大阪に行っても自然に右歩きになり、大阪の人は左歩き。つまり、他地域に行っても、まとまれば関東の人はそうなってしまうのです。多分、大阪の人がまとまれば、関東でもそうなのでしょう。

 こうなると、これは地域に根差す文化・風習でありまして、そのルーツをたどるしかありません。でも、残念ながら、そのルーツは未だ不明ですから、私の終生の命題になった、いや、しなければいけないという気になりました。

 私の旅は、まだまだこれから。そして、また楽しみが増えたのです。

 どなたか、そのルーツについて、ご教示いただけませんでしょうか。

 ちゃんと、お礼はしまっせ!(笑)