【Vol.320】9番線が無い

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 新しいことを知るのは嬉しいことです。しかし、それまでに気付かなかったことを知った時は悔しい気持ちになることがあります。今までなぜ気付かなかったのか、それも、いつも通っている道なのに、何で気が付かなかったのだろう。そんなことがありました。

 この仕事を始めて、もう45年。それも始めのきっかけは名古屋のクライアントですから、名古屋駅は一番お世話になっている駅と言っていいでしょう。
 今まで何回、名古屋駅に降り立って、そこから乗り換えるということを繰り返したのでしょうか。単純計算しても一月に最低三回は利用するのですから、3×12×45で1620回はお世話になっている勘定です。(笑)

 その名古屋駅の在来線で、9番線の無いことに、先日、初めて気が付いたのです。何と言うことでしょう。今まで1620回以上も通っている在来線への通路を歩きながら、えっ?・・・一瞬、ポカンとしてしまいました。
 新幹線から降り、ホームへの誘導路の案内表示板を見ながら11…、10…、8…、んっ?という感じでした。きゅ、9番線が無い! と、改めて振り返って見渡しましたが、在りません。同行している人にも確かめましたが、本当に無いのです。
 繰り返しますが、1620回以上も通っている道なのに、何で今まで気付かなかったのか、と言うより、こんなことがなぜ起こるのか、それが不思議なことです。

 慣れた道、当たり前の道なのに、なぜ気付かないのか。8番線も10番線もしょっちゅう使いながら、なぜ9番線が無い事に気付かなかったのだろう。それを一日中考えました。終日、納得がいかないと言いましょうか、腑に落ちなく、変に気の抜けた感じでしたが、帰京して調べました。
 そうしましたらちゃんと答えがネットに出ていて、実は、8番線と10番線の間にはもう1本線路があって、これが9番線であることが分かりました。名古屋港線(なごやみなとせん)、通称東臨港線と言われる貨物専用線で、線路はあるのですがホームは無いのです。中央線の貨物列車の専用線ということです。

 分かれば安心。そんな感じでした。一瞬、ビックリしましたが、分かれば、なんだそうなのかと納得です。しかしよく考えると、私たちには、このようなことが結構あるのではないでしょうか。
 いつも慣れ親しんだ道なのに、いつの間にか取り壊されていたお店に気付かなかったり、あるいは、いつも一緒にいる人の髪型が変わったのに気付かなかったり (うちの奥様には、気付かずに、いつも叱られます) 、要するに日常に馴れてしまうと、このようなことが多くあるのではないかと思うのです。

 それが、分からなくても或いは知らなくてもよいことならいいのですが、知らないと困る事なら大変です。しかも、知らないばかりに大きなご迷惑を掛けるようなことがあったら大変です。知らないでは済まない、そんなことがあってはならないのです。
 今回の事件(大袈裟ですが)は、誰にもご迷惑を掛けることもなく、笑って済むことでしたが、これからはもう少し注意深く、周囲に気を配りたいと思った次第です。

 ところで私、今年から(実は昨年末に)髭を剃ったのですが、殆どの人が気付かずに居られます。剃ってしばらく、私が言うまでは家族も気付かなかったのですから仕方ありませんが、それだけ私の存在感も、それも、髭の有る無しなんて気にすることはないのでしょうね。

 でも実は、いつ気付いてくれるのか、それが心配になっているのです。
 もう、どうでもイイのですが…。(笑)