【vol.295】ものは言いよう

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ものは言いよう、とよく言います。
同じことでも、言い方によって良くも悪くもなることですが、最近、確かに「言いよう」で違う、と思うことがありました。

東京から新幹線に乗って新横浜を過ぎたころ、決まって検札に車掌さんが来ます。お気付きの方も居られるかと思いますが、これが東北新幹線ですと来ないのです。検札をしなくても、指定席券を買った人の席が分るシステムになっているので、JR東日本管内では、指定席券を買って乗ると、車掌さんは検札に来ないのです。

このようなシステムを、なぜかJR東海は未だ導入していないようでして、指定席車には必ず車掌さんが検札に来るのです。それも、東京駅を出て、ちょうど眠くなる新横浜を過ぎた頃ですから、「お休みのところ恐縮ですが切符を拝見します」と丁寧に言われても、たまにイラッとしてしまいます。

この間も、ウトウト仕掛かったところに、車掌さんはタイミングよく来てくれました。いつものように、「切符を拝見します」と言うのですが、私は思わずこう言ってしまいました。「東北新幹線は検札しませんよね」。
さあ、ここからがものは言いようのお話です。

その車掌さんは、予め決められた想定問答集に答えるように、「本数が多いからです」と、シレッと言ったのです。私は「えっ、それって逆じゃないですか。多い方がシステム化しないと、まずくないですか?」と言うと、「いえ、多いからシステムが追い付かないのです」と、これまた想定していたかのように答えるのです。
どうも、東北新幹線は東海に比べて本数が少ないのでシステム化できたが、こちらは余りに本数が多いので、システム化できずそれだけ大変ですと、聞きようによったらそう聞こえるような返答です。

まあ、そんなに目くじらを立てる話ではありませんから、その場はそれで終わりましたが、ものは言いようだなと思ったのでした。簡潔に、「すみません、当社は未だシステムが無いのです」と言えば、それで済むことですが、それを、訳の分からぬ釈明をした途端に、こちらの心情は悪くなってしまいました。

でも暫くして、私も、ものは言いようで、誰かに失礼な事があったのかも知れないと気になりました。何気ない会話の中で、ものの言いようで、真意が全く逆に伝わってしまたことが、自分は気付かないだけで、案外、多くあったのかも知れません。
そのようなことを考えるようになり、ものは言いよう、と思われる表現があちこちに見えるようになりました。

例えば、いつも新幹線の中でのむ缶チューハイの表記に、「手摘みレモン」と書いてあるのを見て、上手い表現だと、妙に感心してしまいました。よく考えれば、レモンは手摘みするのに当たり前ではありませんか。それなのに、わざわざ「手摘み」と書かれていると、ああ、ちゃんとやっているなと思ってしまいます。
「一番摘み茶」もそうです。最初に摘んだら一番ですが、あえてそう言われると、何か新鮮な気になりますし、とにかく一番ならいいと思ってしまいます。

このように、私たちの周りには、ものは言いようが溢れているのですが、間違っても、相手の心情を悪くするのはいけません。
良いことも悪いことも、そのままストレートに伝えることがよいのではないでしょうか。
さて、今夜も情報収集の為に一杯やって行きますか。えっ、それはただ呑みたいからだろうって?
ははは、そうです、ものは言いよう、なのですよ。