【Vol.227】死角を探せ

 クライアントのご担当、なにやら嬉しそうです。最近開発した新商品が褒められたとのこと、それは嬉しいでしょう、かなり、苦労された開発でした。
 誰に褒められたか、それが、どちらかというと同業者なんです。本来、この業界の企業なら、そこを開発しなくてはいけないと思っていたんでしょう。アッパレとばかり、褒めてくれたのだそうです。業界で誰も気付かなかった、そんな開発だったんです。

 ところで、褒め言葉にも色々ありますが、「貴社は、いつも死角を狙い澄ました様な開発をするのですね」、と言われたのだそうです。同業者にすれば、余程、意表を突かれたと感じたのでしょう。逆に言えば、これほどの褒め言葉、滅多にありません。
 開発者として、一番がっかりするのは、二番煎じ、後塵を拝すことですから、このように、ライバルからも褒められる、しかも、彼らの眼中には無かったことを褒められる、これは勲章のようなものでしょう。

 死角、辞書を引きますと、銃砲の射程内であるが、地物(ちぶつ)の障害または銃砲自身の構造上どうしても射撃し得ない区域、とあり、または、ある角度から見ることが出来ない地点・範囲のこと、なのだそうですが、ビジネスの世界で言えば、正に、ある角度から見ることが出来ない、ビジネスチャンスということです。
 最初、死角という言葉、あまり良い印象ではありませんでした。むしろ、逆に悪い言葉のような感じでしたが、このお話を聞いてから、死角は、ビジネスを有利に進める、意識すべきことではないかと思うようになりました。

 よく、マーケティングの世界では、マジョリティーあるいはマスを狙えというのがあります。しかし、この多数派、当り前ですが誰でも探せるのです。お客様として、一番見える、或いは気付くことの出来るお客様、それは、誰でも知っているお客様なのです。誰でも知っていれば、誰もが、そこに行く。それでは、何の競争力もありません。
 誰にも出来るビジネスは、直ぐに競争、しかもコストの競争になるものです。逆に、誰も簡単に出来ないことは、競争になりません。死角は、そういう意味でも、競争にならない競争力を持つために意識すべき考え方ではないでしょうか。

 そう言えば、逆張りという言葉もありますが、これは、市場の人気が強い時に売り、弱いときに買うことです。しかし、それはある意味、多勢が向かう方向に対して、その逆に行くというセオリー(定説)です。セオリーとは、知識のある人は知っていることですから、それは特段の競争力とはいえません。

 死角、それは、文字通り見えないところなのですが、あえて、見えないところにビジネスチャンスを見出すことこそ、これからの戦略かもしれません。

 そう考えれば、死角を探すことは、生きる道を探すこと、言い換えれば、生角とも言えるのではないでしょうか。

 えっ、SIに死角は無いか?
 それは分かりませんが、確実に言えること、私には何も資格がありません。ははは。

以上