【Vol.220】訊きたいから見せる

 最近、クライアントの経営者があちこちの企業に招かれるようになりました。それも、業種が異なる企業に、です。招待されるこちらとしても、異業種の企業を見学するのは勉強になり、それはそれで嬉しいことですが、どうも聞いていると、むしろ、招待している企業の方が勉強しているように感じるのです。なぜそう思ったのかというと、招待する側の経営幹部、それもトップ自らが案内するようなケースが多いと聞いたからです。

 クライアントは流通小売業ですが、厳しい経営環境の中、次々と新しい機軸を打ち出して、同業他社との熾烈な戦いに耐えながら、というより、優勢に展開している企業の、知る人ぞ知る経営者です。その、カリスマとも言える経営者に会社を見てもらい、意見を訊くという企業が増えている、そこに、大切な本質があるのではないでしょうか。

 大体、自分の会社を見せるなんて好ましいことではない、と考えている経営者の方が多いのではないでしょうか。まして、開発型や熾烈な競争に晒されている企業ほど、機密事項や公開したくない情報があると思い込み、見せない傾向にあるようです。よく、見学コースを設置している工場などに行くと、可もなく不可もなく、上っ面だけ見てもらう(言葉が適切ではないかもしれませんが)姿勢がうかがえます。

 それなのに、経営者や幹部自らが案内して、殆ど全てを見せてしまう。しかも、その見せ方、半端ではなく、ここまで見せてよいのかというくらい、殆ど全てを見せるというのです。例えは悪いのですが、丸裸。そのくらい、全部見せてしまい、その上で意見を訊くという姿勢、ここに、深い意味があるように思うのです。大袈裟に言えば、丸裸になることこそ、重要な情報に触れることが出来る、と思うのです。

 私もコンサルタントとしての立場から申し上げますと、中途半端な情報開示、実は逆効果でして、本当のことを教えてもらわないと、こちらも本当の提案なんて出来る筈はありません。確かに、機密事項や公開したくない情報はあるでしょう、しかし、よく考えてみると、情報や技術がめまぐるしく変化し高度化している現代において、過去に拘っていること自体がリスクとも言えるのではないでしょうか。まして、情報や技術を開示したとき、あっさりと同じことを模倣されたり、同様な事業をされるようでは、元々競争力などは無いということです。すみから隅まで隠すことなく工場や事業所を見学してもらい、積極的に情報を開示すること、それは、更に競争力を高めようとする企業にとって、最も有効な手段のひとつであることは間違いありません。

 有能なカリスマ経営者にホンネのアドバイスを受けることで、より高みに臨もうと考える経営者。見てもらった結果の意見やアドバイスは、的確で大いに参考になっていることでしょうが、大切なことは、見てもらう側、招待する企業の見せ方なのです。いつか、情報とは発信することで集まる、と書いたことがあります。それは、あたかもタライの水と同じで、(情報を)押し出すとぐるっと回って水は集まってきますが、(情報を欲しがるだけで)かき込もうとすると、脇から流れ出してしまう、それと同じなのです。

 如何でしょうか皆さん。見てもらおうではありませんか。自分の会社を積極的に見てもらうこと、それは、情報が集まる最も有効な手段なのです。

 えっ、SIはどうかって? 勿論、100%オープンですよ。いつでも誰でもお越しくださいな。ただ、本当にちっぽけな事務所ですから、ビックリしないでくださいよ。