【Vol.175】安くしよう、で悪くなる

  安くすることが、本当にいいことばかりなのでしょうか。今、私達の身の回りに起こっている不祥事や不具合、総じて不幸な出来事は、モトをただせば「安く、安く」という思惑から始まっているといっても過言ではありません。
 あのMIートHOープなんて言語道断。あの社長の考え方の根本は、とにかく、原料を安いものにして、その差益で儲けること。ちゃんとやっていても利益があるのに、何故、あんなことをしたのでしょうか。多分、仕入れを安くして製造原価を圧縮しようという思惑だけが先行し、とうとう、豚肉を牛肉と言い、肉の種類までも偽装したのです。続けて行けば、いつしか不正にも鈍感になり、結果、正義を忘れて(放棄?)しまったのではないのでしょうか。言い換えれば、安くしようとして魂を売ったということです。

 今回の事件、食品に関わる流通・小売業者に与えた衝撃は計り知れません。もう、迷惑を通り越して大打撃でした。
 それは、食品流通のトレーサビリティを進める者にとっては、足元が崩れたくらいの衝撃です。牛肉コロッケと言いながら、実は豚肉や鶏肉だったなんて。業界にとって、商品の原材料を疑うことなど想定外。まさに、事業の根幹を脅かすものでした。生産から消費まで、その情報の全てを開示し、安心して食べていただくようにするのがトレーサビリティの基本です。安全・安心、環境、コンプライアンスと言っているのに、そのモトのモトが違うなんて、何故、このようなことが起きるのでしょうか。
(因みに、今回の事件では、トレーサビリティをしていたお陰で、当該商品の即時撤去と代金の返却がスムーズに行われ、逆にお客様から評価されたそうです。)

 言うまでもなく、食品は毎日いただくものですから、法外に高くてはいけません。でも、安全・安心、環境、コンプライアンスを維持しながら生産・提供するには、ある程度のコストが掛かります。その為、トレーサビリティしている食品はそうでないものより若干高く販売しています。
 それは、めぐり巡って消費者の利益になると信じているから出来ることで、販売事業者の利益をかさ上げすることではありません。お客様の為になるのだから、結果として高くなり、納得して買っていただく。そこには、ただ安くすればいいという考えはありません。
 ちゃんとする為には、ちゃんとした費用が掛かり、それは消費者が負担する「受益者負担」という道理があるのです。

 食品業界だけではありません。私たちが開催した「価格競争なきものづくりセミナー」で講演していただいたジャーナリストの資料にも、製造業が調達を安くしようというのはむしろ少数派で、多くの事業者は信頼性を重視している傾向にあるとのことでした。
 昨今、中国製品に使ってはいけない材料や薬剤があることが知られるにつけ、敬遠する消費者が増えています。米国には「China free」と表示した食品が現れたそうです。「中国製は入っていない」ということですが、それは中国だけの問題ではありません。わが国でも賞味期限を偽った銀座や北海道のお菓子屋さんがありました。結局、安く上げようとした結果です。

 繰り返し起こるこれらの不祥事。ひょっとして、安くしようとして不正に走るのは、人間の本能的な衝動なのかもしれません。ならば、その衝動を抑えるだけの理性と正義を身に付けなければいけません。
 でも、人間は弱いものです。そのような衝動を抑える時のおまじないを教えましょう。唱えるコツは、お経を読む感じです。ではどうぞ。

ヤ~スク ヤ~スクデ ワ~ル~クナルゥ~ タカイ~バカリジャ~ キャクガコマル~ 
チャ~ント ヤ~ルナ~ラ ハ~クリ~ ケ~イゾクゥ~ 

…なんちゃって。