【Vol.176】終わりの切れ味

  とっても素晴らしいセミナーでした。但し、最後を除いて。

 今回のお話は、悪口ではありません。案外、そのようなことがあったとき、誰が言うのでもなく、そのまま忘れてしまうようなことです。でも、それは時として残念な結果になってしまったり、今回のようなセミナーの場合、出演者や参加(受講)者へのダメージになることさえあります。セミナーだけではなく、物事の終わり方について考えました。

 繰り返しますが、本当に素晴らしいセミナーでした。食品のトレーサビリティが如何に大切か、食品メーカーの不正や、発覚後の不適切な対応に対する消費者の目が厳しくなる中で、まさに絶妙のタイミングでした。主催者は農林水産省。供給側の生産者やメーカー、中間流通業者や小売、それに消費者も参加しての「食品トレーサビリティセミナー」です。
 講師陣はまさに豪華適任。よくもこの日に揃ったものだと思うほど有名な学者や経営者、それにお役所の責任者です。内容も素晴らしく、それぞれのお立場での高度な考察や、格調高い見識が、参加者にビンビン伝わりました。4~500人ほどの参加者、寝ている者などはいません。内容について言えば、参加者の誰もが学び、満足したことでしょう。

 で、何が残念だったかということですが、そのセミナーのコーディネーターの「閉会の挨拶」なんです。何ともまあ、厳しく言えばセミナーを台無しにしてしまったほど、シメの挨拶がひどかったのです。
 そもそも、司会者がセミナーを進行していたので、このコーディネーターの存在自体、閉会の挨拶が無ければ何も気になりませんでした。しかし、最後の最後に、このコーディネーターのお陰(?)で、セミナーの輝きを一挙に失せるほど、ひどい終わり方になってしまったのです。多分、何がしかのお働きはあったのでしょう。講師への招聘や交渉など、コーディネーターとしてのお仕事はされたのでしょうが、その功績も帳消しです。

 具体的に何がひどかったのか説明しましょう。
 何と、講師お一人ずつの講演内容について、解説したのです。素晴らしい講演の内容を、コーディネーター自身の知見を重ねて、解説したのです。そのうえ、参加者に対しても、このセミナーで学ぶべき点や今後の行動指針的な説話(説教)を、長々としたのです。
 ああ、何という不見識かつ非常識。これほどの「余計なお世話」「蛇足」を聞いたことはありません。講師陣の素晴らしい講話に「上書き」するという行為、信じられません。一体、何の目的で主役である講師の講演内容を解説しなければいけないのでしょうか。
 会場を出る時の不快感。あれほど素晴らしい講話を聴けたのに、なんでこんなに不快なのか…。私ばかりではありません、一緒に聴いた弊社の社員も同意見でしたし、多くの参加者も同じように感じたことでしょう。

 さて、教訓であると思ったのは、そこに何の悪気も無かったからです。善意での結果だと思うからです。良くしよう、親切にしようと思ったのに、締め方で結果が悪くなる。私たちの周りに、よくある話です。
 繰り返しますが今回のお話、コーディネーターの悪口ではありません。物事の終わり方、締めくくりが肝心だということです。盛り上がったなら、ピークのままスパッと終わる。終わり方の切れ味、大切ですね。