ビジネスモデルの時代と言い続けて、もう10数年。商品やサービスそのものの開発も大切ですが、最初に決めなくてはいけないのが、ビジネスモデル。企業にとって、最も基本となるビジネスモデルが決まらなくて、何故、先に商品やサービスが決まるのかと、問い続けて参りました。
実際、明確なビジネスモデルを持つ企業は強くなり、小手先の商品開発を繰り返すだけの企業は衰退しています。多くの企業を見るにつけ、これから益々、ビジネスモデルが大切な時代になっていくと実感します。ですが、ビジネスモデルって何なの? と訊かれることも多くなりました。私は、私なりにビジネスモデルを定義し、その意味を理解して実践しているのですが、人によっては大きな温度差があるようです。今回は、ビジネスモデルを定義しようと思います。
ビジネスモデルとは、Business と Model をくっつけた造語で、日本語で言うならば「事業のカタチ」とでも言いましょうか。カタチの意味にも色々ありますが、この場合は、形式(型式)的なことではなく、特長や方法、計画などの意味と致します。
ビジネスモデルの典型例として、いつも私が取り上げるのが「富山の置き薬」です。昔、越中富山の薬売りは、全国に薬を販売する際、薬箱を無料で置いて回りました。お客様の家に薬箱を無料で置いていくのですから、大変な先行投資ですし、その労力はもとより、管理システムがしっかりとしていなければ、とても出来ることではありません。全てが「売り掛け在庫」ですから、その情報を記した台帳を厳密に管理し、親子といえども相続させず、必ず、資産(売り掛け在庫)を時価で決めて、売買したそうです。
先に使用していただき、後からお金をもらう。当時から「先用後利」と呼ばれているこの仕組みは、それまで世界中で誰も考えなかった画期的な商法でした。そして、それは「薄利継続」の仕組みでもありました。全国の一般家庭に「置き薬」を配置しても、そのお薬が高額だったり、誰が見ても高収益と映ればお客様に嫌われます。
大切なポイントは二つ。先ずは使ってもらう為にタダで配る。そして、薄利でもよいから、適度な収益で継続を優先させる値ごろ感。
そうです、最初から越中富山のお殿様と売薬事業者には、「先用後利」「薄利継続」という明確なビジネスモデルがあり、だからこそ、大事業をスタートさせる意思決定と実行力が出来上がったのでしょう。
このように、ビジネスモデルとは、事業の機軸、すなわち仕組みや方法、計画など、最も基本的かつ上位に位置する概念のことを言います。更に、私流に言えば、「ひと言で事業の概要を表現する簡潔なコトバ」です。逆に、ややこしい説明を加えなければ理解できないようなビジネスモデルは、複雑な要素が混じり合って成り立っている分、ちょっとした外因でも直ぐに崩壊する脆弱性を含んでいます。
誰にも直ぐ分かる、簡潔な事業概念。それが真のビジネスモデルであり、ちょっとやそっとでは崩れない、強固な機軸なのです。
近年では、JR東日本社が表明している「生活支援総合サービス業」も、明確なビジネスモデルと言えましょう。鉄道事業より、むしろ顧客の生活全般を支援しようという、新しい事業機軸が、この言葉で簡潔に表現されています。
ビジネスモデルがあれば成長する。それは、JR東日本社や多くの成功企業が証明しています。言い換えれば、ビジネスモデルがなければ、企業は成長することや存続さえも危ういということです。
さあ皆さん、先ずはビジネスモデルで行きましょう! 商品やサービスを考える前にビジネスモデルを決める、そういう時代になっているのです。
さて、私の会社のビジネスモデルは何かって? それは、「友達のともだちは皆トモダチの輪拡大事業」に決まっているじゃありませんか。