【Vol.169】メタボ経営のすすめ

 クライアントのご担当が笑いながら言いました。「御社みたいな小さい会社が、何でこんな開発をしてしまったのですか?」、そう訊かれて困ってしまったそうです。
 褒めているのか、けなしているのか、話の流れからみるとどうも褒められたようなんです。一方で、そんなに大それたコトをよくも…、という感じも多分に込められていたようで、言われた当人は改めて達成感と充実感がこみ上げてきたそうです。

 その開発テーマは、将来の事業規模も相当大きなものになると予想され、確かに今の会社の規模を考えれば意外に映ったのかもしれません。正直に、「御社みたいな小さい会社が…」と言ってしまうのは、それだけ凄いこと、大した事なのです。
 今回は、その後の社長のお話が面白かったのでご披露する次第です。
 社長に、「ご担当がこう言われてしまったそうですよ…」と言いましたら、「それは多喜さん、うちはメタボ経営ですから」と仰るのです。何の事か分からないでいると、「ははは、要するに太っ腹なんですよ」。そう、今はやりのメタボリック何とかのシャレなんです。続けて、「よっぽど太っ腹でなければ、あの開発にはゴーサインは出せませんでしたよ」。
 きっと、開発が成功するかどうか、社長ご自身にも確信が有った訳ではなかったのでしょう。その、どうなるか分からない時の決断・決心を、「太っ腹」という気持ちで表現されたのでしょう。まさに言い得て妙。感心しながら、このお話には色々な教訓が含まれていると思いました。

 先ず第一に、社長が文字通りの太っ腹経営者であることが分かります。開発とは、先の見えない暗い夜道を歩くのと同じです。担当者は、その不安と戦い、重圧に耐えながら開発を進めていくものです。その過程で、如何に担当者の諸々の不安を軽くしてやるか、それは絶対に経営の最高責任者である社長の役割です。社長がどっしりと構えていれば、担当者は失敗の心配よりも、成功のためのパワーを出し切ることが出来るのです。
 第二に、良い意味での「余計な脂肪」を蓄えている会社であるということです。言い換えれば、この会社の経営基盤は、一度の失敗でおかしくなってしまうようなものではないということです。<経営者はいつも「万が一」を考えておかなければなりませんが、その責任を担当者に課すことはナンセンスです。
 第三に、実はこれが一番言いたいところなんですが、ユーモアのセンスです。ユーモア。その一言は、人間の大きさ、気品、当意即妙の才、すなわち知的レベルの証でもあります。ユーモアの才とは、アイデアの才でもありますし、周囲を和ます配慮の才でもあります。知的で上品なユーモアに包まれている会社の開発が不調になる訳はありません。ユーモアとは、開発に欠かせないパワーでもあるのです。

 如何でしょうか、皆さん。ユーモアで会社を包む経営手法。笑う会社には福が来る…。このような会社が、これから益々伸びて行くのです。
 そう言えば、笑いがあると体調が良くなり、栄養を効率的に取り込み、結果、太りやすくなるのだとか。社長のお腹もメタボなのがチョッと気になりました。
 えっ、私のお腹? それは内緒。ハッキリとサイズを言えないのが困ったものです。トホホ…。