【Vol.147】国益というビジネスモデル

 経産省の産業クラスター委員会というのがありまして、その委員を仰せ付かっています。
産業クラスター政策とは、全国各地に産学官連携・産産連携のネットワークを形成するとともに、地域のイノベーションを促進することにより、新産業・新事業を創出するのが目的です。その基本的な施策設計の段階から、地域での具体的な計画策定まで、本省と経産局での委員に委嘱され、色々な場面でお手伝いをしています。
東北経産局での委員会では、事務局であるお役所のご担当の方々の働きぶりを見るにつけ、まさに「お役所仕事」ならぬ「本物のお役所仕事」にビックリしています(皮肉ではなく、本当にそれだけのお働きぶりでしたよ)。しかし、公僕ですから、当り前かも知れませんが、あんなに働いているのに、企業や学識経験者の委員からは誉めたり評価する声はチョッとしかあがりません。公務員をけなすことはあっても誉めることのなかった減点主義のこの国のしきたり(?)でしょうか、やはり何か変だなと感じました。
余計なお世話かも知れませんが、企業を活性化して雇用と地域経済を何とかしようと頑張る公務員の皆さんの姿を、より多くの方々に知っていただきたいと思うばかりです。

 さて、そのような委員会でいつも私が声を大にして言っていることは、「官民一体でビジネスを進めよう」ということです。
エッと思われる方も居られるでしょうね。そうなんです、多くの方が大抵は「官から民へ」と言うのが普通ですから、一見、逆行しているように思われるようです。中には官がいつまでもやると「民業圧迫」とか、「民活の妨げ」などと訳のわからないことを言う人もいます。

 私が言いたいことは、産学官連携と言いながら、ビジネスの話になると急に「官から民へ…」となってしまうのは、どう考えても変ではありませんかということです。
よく考えてください。官が民の事業をしますか? 自動車を作って売りますか? 家電製品を作って売りますか? ソフトやシステムを…、そんなこと絶対に無いじゃありませんか。多分、「癒着」や「汚職」「天下り」を考えてのことかもしれませんが、ちゃんとやっている企業はそんな馬鹿なことはしません。
 ビジネスとは、チャチな利権構造とは違うのです。

 羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く。
それはわかりますが、なぜ官民を分けて考えなくてはいけないのでしょうか。いつも言うように、所詮この世は産学官しかありませんよ。産学官が暮らすこの世とは、この国のことです。この国の活力を伸ばそうとしているのに、官と民が離れていく。つまり、この国の利益を考えるという視点が欠如しているのではないでしょうか。一体、いつからこの国では「国益」が死語になってしまったのでしょうか。どの国でも、大統領自らが先頭に立ってトップセールスをしているのが当り前なのに、産学官で始めようと言いながら、国益といった途端にビジネスが上手く行かなくなる…。本当に変な話です。

 そこで考えたのです、国益を優先的に考えることが新しい事業スキームに繋がるのではないのかと。もっと強い絆で産学官が一体となって国益を考える。それが、結果として強いビジネスモデルになると思うのです。
 これからは、国益を考えること自体が、斬新なビジネスモデルなのです。