【Vol.146】守・破・離

 仕事を通じて実に多くの方とお話する機会を頂いています。勿論、お話の内容はご担当との開発に関することが一番多いのですが、経営者の方とお話することも多くあり、教えられてばかり、本当に幸せな仕事です。
先日も、新事業を仕掛けている経営トップとお話することがあり、やはり物事の本質は共通することが多いと再認識致しました。今回ご紹介する、その共通的な本質とは「守(しゅ)・破(は)・離(り)」というもので、私は剣道を通じて学んだことでありました。

 「守・破・離」の解説が必要です。剣道の稽古では、上達の段階を「守・破・離」という言葉で説明することがあります。
先ず「守」とは、初級の段階で、師範の教えを忠実に守れというもので、とにかく愚直に教えを守り基本稽古に励みなさいということです。
次の「破」とは中級から上級へ進む段階で、教えを自分なりに理解して、自主性と言いましょうか、基本に加えて自分のカタチを持てということで、少々型破りでもいいということです。
そして、「離」とは自己が確立した状態で、師範から離れ(独立)、自らが進んで独自の道を歩むことを言うのです。

 さて、「守・破・離」を再認識したのは、その経営者が「これからは全て見直し、従来の常識から離れなければ将来はない!」と言われたからです。その会社は地方の名門企業で、堅実な経営でも定評のあるメーカーですが、今は知る人ぞ知る超開発型企業です。本業もしっかりとしていますが、新しい部門に投資を惜しまず、今まさに「守・破・離」の「離」段階の成長企業です。
多分、その方は「守・破・離」はご存知無いのでしょうが、本質は同じです。本業を着実に守ったから今があるのは当然ですが、その過程では様々な困難もあった筈です。困難を乗り切り、競争に勝つ為には独自性が必要だったのは言うまでもありません。そして今、これからはもっと企業力を強くしなければという危機感から、全てを見直すという言葉が口に出たのでしょう。

 経営とは、同じことを繰り返しているだけでは成り立ちません。競争を仕掛けてくる者もいれば、安く抜け駆けする者も出て来ます。この経営者は、誰も知らない自分だけの新しい道を創る覚悟と勇気が出来たのでしょう。まさに「離」を実行しようとしているのです。
 最近、第二創業や第三創業をする企業が増えています。従来型のパラダイムが大きく変わっていく中で、新しい道を創らなければ企業の将来はありません。

 今、あなたの会社は「守・破・離」のどの段階ですか?