【Vol.104】身近なパラダイムチェンジ

 講演が終わって立食パーティになりました。聴いてくださった方々の(ビールを注いだり注がれながら)感想を聞くのが、(これが案外)楽しいのです。勿論、こちらの勉強や反省にもなるのですが、ストレートな情報に触れる事が一番のご馳走です。お酒が入ると、もう裸のお付き合い状態になってしまうのか、聞くほうも話すほうも「無礼講」。これが講演旅行の楽しみになっています。

 今回の講演では、いずれの業界も構造変化が進んでいる現状、つまりパラダイム(規範)が変わった具体例を挙げながら、その対応策について提言しました。話の中では、その地方の活性化についても触れ、地域特有の業界(ここでは漁業)をどのように地域全体と共生できる産業にするか、そんな話題にも及びました。

 講演で汗をかくものですから、勿論、いただくビールは美味しいのですが、次から次へとお酌をしてもらいながら、色々なご意見を伺います。そんな中で、「でもね、先生、言われることは頭では分かるんですが、なかなか変われないんです」。問題点は分かるが、自らの改革はできない(できそうもない)と言う人が、以外に多かったのでビックリしました。もう、呑みながら講演の続きをしているようなものですが、申し上げたのは、「頭で分かったなら、自らの身体を動かして行動してください」、「あなたの身近なパラダイムチェンジをしてください」ということです。
 いつも、講演の後にこのような事を言われる方は多いのですが、「なかなか変われない」を口癖にしている人は多いものです。今回は力を入れて講演した分、余計に言葉を荒げて申し上げてしまったのですが、世間のパラダイムが変わったのに、自らの、内なるパラダイムが変わらない事には、何も変わりません。「せっかく講演したんだから、少しは感じて行動してよ」。言い方は冗談口調ですが「ちゃんと聞いてくれたら、あとは行動するしかないでしょう」と言いたいのが本音です。

 注いで注がれて、結構呑みました。そして、ほろ酔い気分でしたが、私も考えたことがありました。
それは、いくら一生懸命に講演しても、いつもと同じ達成感ではいけないと思ったことです。本来、講演は私の本業ではありません。ご縁があって頼まれて、それで勤めさせていただくのが、私の講演です。それがいつの間にか、一生懸命の汗に紛れて、身勝手な達成感を持つだけになり、本質を見失ってしまいました。講演が終われば、今回のように言われる方々を、受け容れてしまっていたのです。要は、一種の諦めとも言えましょう。講演が終わっても、お伝えしたい事を何時でもどこでも伝え続けなくてはいけません。それが、私の務めです。

 そう思ったら、今回、講演させて頂いた私が、一番、得したような気分になりました。
 講演させて頂いた私のパラダイムチェンジ…。ありがたいことです。