【Vol.82】六次産業

 「六次産業で行こう」。この耳慣れない言葉に大感動でした。

 おさらいです。
一次産業とは農業・林業・水産業など自然に働きかけるものです。
二次産業とは、地下資源を取り出す鉱業と鉱産物・農林水産物などをさらに二次的に加工する工業や建設業などです。
三次産業は商業・運輸通信業・サービス業など、第一次、第二次産業以外の全ての産業を言います。ですから、この世に六次産業など在り得ない筈なのに、そのような産業で地域おこしをしようと決めたというのです。

 で、なぜそうなったかと言うと、そもそもの始まりは「美味しい牛乳」です。
以前に書いた自然放牧の話が、あれからずうっと続いていて、岩手から島根に飛び火したのです。
島根の中堅企業が、島根の山間地に牛を放し、完全自然放牧で地域おこしをしようという計画がついに具現化するのです。自然で美味しい牛乳を作り、乳製品に加工して全国に出荷する。そして、その牧場の周辺には広大な自然景観を生かした長期滞在型のロッジや別荘地などのリゾート施設を散在させ、併せて自然の中で育つ牛と遊べる教育・研修施設も計画されています。

 実は、このような話はどこにもあるのですが、大体は一番最初のところでつまづいています。つまり、牛乳に付加価値が無いので採算が合わず、計画が軌道に乗らないまま失敗するのです。この牛乳なら一次産業なのに見事に収益が見込まれ、続く二次産業の乳製品の加工、全国への販売、そして広大な自然を生かしたリゾートの三次産業と、それぞれが無理なく連携して、これといったリスクも無く始められます。自然放牧された牛は生きるために一生懸命雑木を食べ、山間地を美しい森と放牧地に復活させ、森の恵みの水が河川は勿論のこと海まで生き返らせます。海と川と森。島根の自然を、自然に放たれる牛の力で蘇らせようという、正にクリーンで壮大な計画がスタートするのです。

 話を戻します。なぜ六次産業かというと、一次、二次、三次で、一、二、三、その全部を足すと六ですから、六次産業になるということです。牛乳に始まる其々の産業が連携する地域おこし。その象徴として「六次産業」というキャッチフレーズで行こうというのです。
 「イッチ、ニッ、サンッ、で六次産業」。何という心地よい響きでしょうか。実は六次産業を構成する要件は難しいものではありません。敢えて言うなら急がないことくらいでしょうか。牛を放して牛乳が取れるようになるには2年かかります。2年かかって牛は逞しく成長し、それはそれは美味しい牛乳を作ってくれるからです。
 急がずに待つ。それも「イッチ、ニッ、サンッ、」と歌いながら待ちましょう。
 イッチ、ニッ、サンッ、で六次産業。
感動からビジネスに、日本を救う大きな産業になることを願ってやみません。