【Vol.58】開発の抵抗勢力

 まあ、開発のお手伝いを30年余もやっていると本当に色々な事に出会います。嬉しい事、感動する事、寂しい事、悲しい事、それはそれは様々です。でも、今回の事はある意味で、様々な場面で出くわす「困った事」です。

 開発が進んでいくと、具体的なマーケティングがより重要になってきます。ここで言うマーケティングとは商品の概要を煮詰めて、且つセールスプロモーションを具体的にどうしようかという意味です。そのような場面において、当然のことですが具体的な仕様を決めるためには、ユーザーにより近い最前線に出て実態的なニーズを調べる事が重要です。

 しかし、こんな時にある種の方々から口を突いて出る言葉は決まって、「売れない、ダメだ」です。あれこれ商品に対して文句をつけるだけで、ではどうしたら売れるのかとは全然考えない人達がいます。従来には無かったアイデアを基にした商品ならなおさらのこと「ダメだ」の大合唱が起こるものです。
 何故このように否定的になるのか不思議なくらいですが、思い当たる事もあります。それは、ダメな理由を探すのが仕事だと、頑なに決めているからだと思われます。「従来には無いものはリスクが大きい。顧客も初めてだから、多分ダメだろう」。「とにかくダメなものはダメなのだ」。
 まあ、心配なのは分かる気がしますが、その方が決定的に間違っている点は、真のニーズに出会っていないのに、勝手に結論付けてしまっていることです。「今まで扱った事が無い」なんて顧客が言うのは当り前です。新しい事は未知なもの。それを乗り越えて行くのが開発、即ち「拓いて発する」真髄です。
 それと、これは事実ですからしょうがありませんが、実は案外多いのが、結果として上手く行くと困る人たちの存在です。初めは私も信じられなかった事ですが、実際に順調に事が運ぶと嫌がる人がいるのです。何事にも波風が立つ事に抵抗する人はいます。それと一緒で、何か変化が起きようとする時、本能的に否定的な立場へと、すーっと自然に変身する人が、本当にいるのです。条件反射かもしれません。ただ、そのような人が、定量的にいると覚悟しておいたほうがいいでしょう。別に、本当にその方が困るといった状況になるはずはないのに、無意識の内に否定的になる。言わば一種の「現象」でもあるのですが、事は厄介です。

 開発が進み、さあこれからという時に、このような「抵抗勢力」が出現する。今の政治の世界だけではなく、これは普遍的な事のようです。