【Vol.31】足元のフィールド

 青森の産業支援センターでの講演が、もう3年目になり、定番になろうとしています。ご担当のお顔を見て、もう一年経ってしまったのかと思うくらいです。私の話を、毎回続けて聴いてくれる方もいらっしゃいますから、新ネタを下ろす咄家ではありませんが、なるべくフレッシュな話題を交えながら計4時間、今年も努めさせて頂いた次第です。ご担当も、毎回趣向を変えておられ、今回は、懇親会を兼ねての相談会をすることになりました。折角の機会ですから、身近なご相談を気軽に受けようというものです。

 始めのうちはぎこちない感じでしたが、お酒が回って気持ちも解けると、そのうちに結構シリアスなご相談も飛び出します。中でも、多かったのが「売り上げを伸ばすために、どうやって他の地域に展開するか」、というものです。要するに、今のままでは横這い又は減少傾向で、他の地域、例えば盛岡あるいは仙台へ進出するには、どのようにしたら良いかとのご相談です。確かに、東北地域に限らず、どこでも顧客の数が増える筈はありません。この現象は全国的に同様で、どんな業種でも苦戦を強いられているのが現状です。

 私は先ず質問をしました。「ところで、御社が持っている、この地域での顧客リストは整備していますか」。「ご贔屓のお客さんの情報をどう管理していますか」。
 答えは、「何もしていません」というものでした。焦る気持ちは有るものの、どうして良いかが分からず、取り敢えず他の地域に出て行けば何とかなる、とお考えのようです。
 どんな企業も、その土地で経営が成り立っているということは、その地域にご贔屓が在ると言うことです。そのご贔屓が在りながら、余所の地域に目が向いてしまう。窮地に陥ると、理解できることではありますが、何と勿体無いことでしょう。
 「もう一度、今までのお客さんを見直しては如何ですか」。「ずっと贔屓にして下さった方々のお話を聴けば、別に余所に行かなくても、新しいビジネスが見えてくるのではないでしょうか」。
 私の話に、ご一同が頷いてくれました。
 そうです。足元のフィールドに、これからもビジネスチャンスは在るのです。