【Vol.316】里帰り

316

 たまに事務所に居りますと、嬉しいお客様が来られます。先日も、以前うちに出向で来ておられた方が、何と、おめでたということで、そのご報告に来られました。穏やかな、もうすぐお母さんになるというお顔を拝見し、懐かしいのと、時の経つ速さを感じました。同時に、事務所の空気もシアワセ感で満たされた感じがして、本当に嬉しいことでした。

 振り返ってみると、私どもSI (システム・インテグレーション) 社は、今までに出向に来られた方も含めて、およそ60名ほどの人が卒業されて行きました。
 出向で来られた人は、帰られたということですが、その他の方々は、独立されたり転職したり、自己都合の退職やこちらの都合など、いろいろなケースがありました。
 時には、喧嘩別れ同様に退職されたり、あるいは、病気になられて、どうしようもなく退社された方も居られました。
 いずれにしても、結果としてSIを去って行かれた方々ですが、今回のように、里帰り的に立ち寄っていただくと、本当に嬉しいものです。ひとしきり、うちに居られたときの思い出話や、戻られてからの仕事ぶりなどの話で盛り上がり、あっという間の一時間でした。

 お帰りになって、フッと考えました。このように、里帰り的にお顔を見せてくれる方と、そうでない方、どこがどう違うのでしょうか。

 
 よく考えると、里帰りと言いながら、これは、卒業生が同窓会で再開したり、かつての学び舎に立ち寄る、そのような事ではないかと思うのです。ならば、私は教師の立場であり、卒業生は教え子ということです。
 こう考えると、里帰り的にお顔を見せてくれる方々は、何がしかSIで学ばれたということで、その意味では、SIが少しでも役立ったと言えるかも知れません。 
 嬉しいことではありませんか。こんなちっぽけなSIでも、そこで学んでくれたという証が里帰り。そう思うと、たまにお顔を見せてくれたり、断続的にお付き合いが続いていて、たまにお顔を見せてくれること自体に、大きな意味があるということです。

 里帰り的現象は、SIと卒業生の関係だけではありません。SIとクライアントとの関係においても、このような里帰りがありました。
 以前、クライアントのご担当が代わった途端にご契約が切れた事例がありました。新しいご担当(役員)は、私どもの仕事ぶりが気に入らないようで、本当にご担当になった途端に打ち切りになったのです。
 しかしその後、何と20余年が経ったある日、以前のご担当の部下の方からご連絡があり、また契約したいとのお申し入れがあったのです。
 その方のお顔はおぼろげに覚えておりましたが、実際にお会いすると、すっかりとベテランビジネスマン然としたお顔で、貫禄十分です。
 「私が担当になったので、もう一度SIさんにお願いしようと思ったのです。実はあの時、何で契約を打ち切るのか、上司ですから文句は言えませんでしたが、いつか自分が責任者になったら、絶対に復活する。そう思い続けていました」と言ってくれたのです。
 もう、涙が出るほど嬉しいことです。続けて、「自分たちでは知らないことをSIが教えてくれたのですから、また教えてください」と言われ、本当に涙が出てしまいました。

 一瞬でも、そこに学びや教示がある。それがご縁の源泉ではないでしょうか。そうして、いつかまたそれを思い出し、古巣を覗きたくなるのが里帰りなのです。
 如何でしょうか、ビジネスの世界にも里帰りがあるのです。あるいは、ビジネスの世界にも「お里」があるのです。

 できるなら、「私のお里はSIです」と言われたいですし、「そんな事するとお里が知れますよ」なんて言われないようにしたいものです。(笑)