【Vol.194】五目スープそばフェチ

 実は私、五目スープそばフェチなんです。五目スープそば、そう、あの五目ラーメンのちょっと高級なヤツです。何で、その五目スープそばのフェチかって? とにかく好きなんです。
 フェチとは、フェティシズムの略で、特定のものに異常な愛着を示すことです。この、異常というところが気になりますが、確かに、異常なほど、出先で、特に昼食には五目スープそばを欠かしません。食べ続けていると言っていいほど極端に多いのです。

 ラーメン屋さんの五目ラーメンは、確かに美味しい店もありますが、私としては、愛する五目スープそばとは違う分類になっています。メニューも、ラーメン屋さんは五目ラーメンと表示されているところが殆どで、五目スープそばと書かれているところは、それなりの中華料理店であるようです。そのようなお店はホテルの中にあることが多く、旅の途中(駅に近いホテル)で立ち寄る便利さもあり、いつの間にか五目スープそばフェチになったのです。
 どれだけ食べるか、とにかく、出張する時には殆ど毎日一回は食べるくらいですから、年間では150から200回くらいは食べている勘定です。時々、昼も夜も食べることもあり、まあ、よくも飽きないものだと自分でも呆れるほどです。

 さて、いつしか私は、五目スープそばのミシュラン状態になっている自分に気付きました。あちこち食べている間に、無意識にランキングをしていたのです。ついこの間も、仙台のメトロポリタンホテルの中華料理店で、「最近、一番を保っていますね」と言ってしまいました。お店の人は、最初何を言われたのか分からないらしく、キョトンとした顔でしたが、「私、実は五目スープそばフェチなんです」と言った途端、自分も、聞いた相手も可笑しくなって、二人で笑ってしまいました。しかし、自信はあります。だって、これだけ五目スープそばを食べ続けている人間は、そう多くはありませんし、しかも、全国で食べ歩いているのです。
 私が勝手に一番にしたここの五目スープそば、ちゃんと五目の基本を守っています。野菜、干し物、エビ、イカ、貝、お肉、卵など、入っていなくてはいけない具が、少なからず、多過ぎず(これポイント)、バランスよく配置され、スープはアッサリとしかも旨味は濃厚で、とろみも上品です。麺は勿論、細麺(太いのはラーメンです)で、スープの絡みつきも理想的。全体量は、これも憎いくらいに七分目ちょっと、つまり、スープを飲み干しても、お腹には少しのゆとりが残っている量です。
 ところで、フェチとマニアはどこが違うか、解説です。マニアは熱狂するのですが、フェチは熱狂することはなく、愛着の度合いが強いタイプです。まあ、フェチだろうがマニアだろうが、どちらでもよいと言われるかも知れませんが、肝心な点は、熱狂的になると一番気に入った店しか行かなくなる訳で、比較が出来なくなることです。私はフェチですから、あちこち食べている間に比較が出来るようになる、つまり、対象の数が多いだけ、評価の信頼性が高いと自負しているのです。

 如何でしょうか、皆さん。フェチとは、一つごとを幅広く観照することなのです。観照、それは知恵をもって事物の実相を捉えることです。
 たかが、五目スープそば、されど五目スープそばなのであります。