【Vol.153】川の流れ

 長いこと開発の仕事をしていますと、開発とは川の流れと同じようなものだと感じています。
 つまり…、
 アイデアが創出され、そこから始まる商品化への流れとは、丁度、山の頂きに近い小さな小さな泉や沢から始まる川の流れのようなものです。はじめはチョロチョロと流れ始めた水、それはアイデアです。ニーズという「勾配」に自然に導かれ、周囲の様々なアイデアやノウハウを取り込みながら、やがて沢筋を流れ下るうちに川の姿になっていきます。
 川の姿とは、商品化に至る形態にも似ています。ニーズが明確なほど、その勾配はきついので、場合によっては一挙に海に出てしまいます。また、ニーズが大きく前広(まえびろ)なほど水量は豊富になり、蛇行を繰り返しながら川幅を広げ、ゆっくりと長い時間をかけて下ります。

 川が流れる周辺も大きな役割を果たしています。山懐に広がる森が豊かであるほど、様々な知恵という栄養を水に溶かし出し、そのニーズも多様化し、多くの商品が生まれていきます。川には多くの藻類や甲殻類、昆虫などが繁殖し、それを餌にする魚や鳥、動物たちの棲みかになるのです。川は流域にも栄養分を補給し、豊かな田んぼや畑を支え、米や野菜という稔りを与えます。
 それは、新しい産業や事業、商品が生まれていくのと同じです。行く手に大きな岩があれば、長い時間をかけて淵が形成され、そこには深いところを好む魚が生息します。ときには河童(かっぱ)伝説のように、新しい物語も生まれます。中洲などは古いニーズの名残かも知れません。それは不要なものではなく、形を変えながら川に刺激を与え、何より、そこには多くの生き物たちが棲む環境があるのです。

 川の一生は商品ライフです。一挙に流れ落ちてしまえば短命ですが、大きな利益をもたらすこともあります。逆に、ライフが長ければ良いという訳でもありません。中途半端な水量なら水質は悪化し、川に棲む生物は勿論、周辺にも悪影響を及ぼす場合もあるのです。
 いずれにしても、川は必ず海に出てその一生を終ります。しかし、水そのものは海水と同化し、やがて蒸発して雲となり、雨となって、再び大地に降り注ぎます。そうしてみると、海とはアイデアという水の揺籃場で、山や森林はアイデアの熟成器とも考えられます。
 こうして、私たちは開発を繰り返して続けることができるのです。そして、そのアイデアというもの自体が、自然の水のように再び海から再生されるのならば、地球がある限り、尽きるものではないのです。

 如何でしょうか皆さん。開発とは、川の流れと同じなんですよ。
 ♪あ~あ~、川の流れのよぅ~にぃ~♪ …なんちゃって。