【Vol.123】裏切られたら縁を切る

 今回は「裏切る人」について考えます。裏切られて、チョッピリ悔しい思いをしたからです。
 先日の、私の体験はこんなことでした。

 友人の伝(ツテ)で来社された方です。「新材料を開発したが、思うような用途が見つからないで困っている」。材料は良いものでしたが、実際の製品にする用途開発が出来ていないようでした。その材料は従来の常識を破った、かなり先進的なもので、用途が明確になればヒットすると直感しました。信頼している友人の紹介ですから、私の知る限りの用途を考えて協力しようと思い、デザインの費用や試作費も負担して開発が始まりました。

 ところが、出来上がったその製品の将来性を感じたのでしょう、一度は約束をした筈なのに、製品の製造・販売権の話は無かったことにしてくれと言って、それで音沙汰が無くなってしまったのです。製品は、私のクライアントで扱えるものでもあり、試作をする前に、「この製品の製造権と販売権は私に任せてもらえますか」と申し上げ、その方は「それはもう、多喜さんのアイデアですから」と確約されて始めた開発なのに、「事情が変わったから」と言うだけです。新材料の基本特許は向こうが持っていますから、用途開発をしたくらいでは、こちらは弱い立場です。信頼して提案し、自らの費用で良かれと思ってしたことを、彼は、私を裏切ったのです。
 土壇場で裏切られたことも悔しいのですが、何故、そんなことをするのか不思議になりました。せっかく、素晴らしい製品が出来るたのですから、皆でやればいいと思うのですが、彼は、独り占めしたいようです。自分の利益を確保したい。それは分かりますが、多くの人の信頼関係を捨ててまで、何故そんなことをするのでしょうか。

 結論は、責任感です。してもらったことに対する責任。要は、人間の最も大切な「信頼」に対する責任ではないでしょうか。それを感じるかどうか、それが問題です。責任を持たないこと、それは簡単です。約束も反故に出来るし、要するに、やりっ放し言いっ放しでいいのです。
 そんな経験をしたので、チョッと注意深く周囲を観察すると、結構いますよ、裏切っている人が。企業にもあります。平気で顧客を裏切るヒレツ会社。恩人を裏切るヒキョウ者。恋人や伴侶を裏切って浮気しているフリン人間。どいつもこいつも、結局は自分の欲だけの無責任人間です。

 さて、悔しい気持ちをどう晴らすか。私にとって、後ろ向きの気持ちでいることは、一番苦手なことです。考えてみると、今回の経験は、掛けたお金や捧げた(チョッと大袈裟ですが)気持ちは返ってはきませんが、知らずにずっと先に行ってから裏切られるより、最初に分かって、その分、軽微に済みました。そうです、最初に分かったから、もっと大きなキズを受けなくて良かったと思えば、逆にラッキーなことなんです。そう納得したら、すう~っと、気持ちが晴れました。
 裏切られたら誰でもブルーになってしまいますが、如何に素早く裏切る人と縁を切るか。物心共に縁を切ってしまうのが一番です。
 そして、「責任」という言葉を噛み締めましょう。ね。
 
 あ~あ、書いて良かった。気が晴れましたよ。メデタシ、メデタシ…。