【Vol.112】地域の『灯台下暗し』

 「灯台下暗し(とうだいもとくらし)」という言葉があります。灯台の直下は明かりが暗いように、手近の事情や様子はかえって分かり難いものだという教えです。最近、このことが非常に大切だと思うようになってきたのです。
 色々なご相談を受ける中で、地域の活性化というテーマが多くなりました。村興しや町興しは、その地域の活性化を表現するには大変分かり易いのですが、逆に、皆さんがそう言いながらも本当にその地域がどうなって欲しい、或いはどうなるべきだ、という共通認識が不備であることが多いようです。

「昔のように若者で溢れるような町にしたい」。或いは「企業を誘致して、雇用と産業を活性化したい」。其々にお気持ちは分かるのですが、一様に、「とにかく、この地域はダメなんです」と言われるのです。いつも思うのですが、チョッと不思議な気がします。そう言う方が、「ダメ」な地域に何故ずうーっと暮らしているのでしょうか。聴き返してみる事もあります。「駅前のホテル、なかなか良いですよ」。「えっ、あそこはダメという評判ですよ」。「あそこのお宮さん、すごく良い感じですよ」。「えっ、地元の人は誰も行きませんよ」。そうなんです。皆さんこんな感じで、要するに、地元のことをあまり知らないのです。
 それはそうかも知れません。地元のホテルに頻繁に泊ったら何か変ですし、氏子でもなければお宮さんにはめったに行きません。それが普通ですし、自分の家と仕事先や関係先に行く毎日の繰り返し。実は、これが地域(東京も含めて)に住んでいる方々の日常です。

 本当は自分の住む地域を知っているつもりが、実は、殆ど何も知らない事実。これが、地域の活性化を考える上での前提条件です。分かり易く言えば、活性化を考えるなら、先ず地元のホテルに泊ってほしいのです。そして、周辺の自社仏閣や名所旧跡も行って見ましょう。要するに、「いつも行けるから行っていないところ」を回って欲しいのです。そうすれば、多分、今まで気付かなかった「新しい発見」や「お気に入り」が、直ぐ出来ること請け合いです。
 「手近の事情や様子はかえって分かり難いもの」は、実は、地域を考える上でも同じです。だとすれば、地域を考えるなら、先ず地域に入るコト。それが近道なんです。東京など大都市に住んでいるコンサルタントの中には地域の活性化が専門の方もいます。そのような方に共通するのは、とにかく地元の方の何十倍も、その地域を知っているのです。
 地域の活性化を考えるなら、地域の足元をもう一度よく見ては如何ですか。きっと、活性化の道筋が見えてきますよ。

 こんな話をしていたら、「じゃあ、灯台だけ有名な観光地の活性化はどうするんだ」と言う方がいました。思わず「♪お~いら岬の~、灯台守は~♪」と歌ったら、妙に頷かれてしまい、訳が分かりませんでした。あ~あ。