最近、特許流通事業のことや、地域活性化をどうするかと話をしていて気付いたことがありました。いずれの方も、事業の推進役である行政官です。気付いた、と言うより「何か変だな」と思ったのですが、要は、地域に拘るかそうでないかという点での相違です。
御存知のように、現状の特許流通事業に携わる「特許流通アドバイザー制度」では、基本的な活動エリアは、その都道府県内だそうです。その為、アドバイザーは各都道府県に均等に配置されているようですが、何故そうなっているかよく分かりません。また、「地域活性化」を推進する行政サイドの方々は、殆ど皆さんが「地域」に拘っているようで、これも何故地域に拘るのかよく分かりません。最近、その辺がやはり変だと強く思うようになったのです。
私事で恐縮ですが、長くこの仕事をやって来れたのは、実は、地域を越えて仕事をしてきたからだと思っています。「地域を越える」。この重要性を、私はある地方企業の仕事を通じて知りました。その会社は大変活発な開発型企業でしたが、創業浅く、いわゆる新興企業でした。開発に取り組む姿勢や方向性はとても良いものでしたが、何せ新しい会社ですから、全部自前で出来るわけはありません。そこで、その地域の実力のある会社に協力を持ち掛けるのですが、どうも上手く行きません。どうやら、その地域では新参者として見られていて、お付き合いが出来ないようです。
そこで、丁度知り合った遠隔地の優良企業を紹介しました。普通なら絶対知り合えないような、それこそ縁もゆかりもない会社です。そうしたらどうでしょう、見事に意気投合して、開発が進み、良い結果になったのです。社長同士が始めて会った時の様子は、それこそ一目ぼれの恋人同士のようでした。勿論、ある程度の基礎的な情報は流していたのですが、お互いの気持ちの中に、変なシガラミや偏見などはありません。初対面でのお互いの第一印象が全てを決めると言いますが、正しくそれでした。
よく考えると、同じ地域に長く居るとシガラミは増えるし、雑多な情報が偏見に変わったりします。それに、「農耕民族」の特性でしょうか、どうしても「縄張り」意識と申しましょうか、自分の土地と他人の土地の「境界線」を決めようとします。仕方の無いことかも知れません。収穫物は大地に根ざしていて動くことはありません。それに対して、狩猟民族は獲物を追い求めるのが基本です。獲物という相手が動くのですから、こちらも動くのが当然です。
ビジネスがこれだけ多様化し、情報も交錯するようになると、どうも、同じ地域で長く活動することには無理があるようです。その意味で、ビジネスは狩猟と似ています。ビジネスの相手が衰退したり、近場に居なくなったり、或いはこちらより活発に動くのならば、もっと活発にこっちも動くしかありません。
富山の薬売りも、近江や伊勢の商人も、全国に旅立って成功しました。
皆さん如何でしょうか、地域を越えることでビジネスが活性化する…。
この本質を、ここで、もう一度確認しようではありませんか。