ご相談の中で案外多いのが、「どこに売っていいのか分からない」と言うものです。まあ、言わせていただければ、「分からなかったら作らなければ良いのに」と思うのですが、それを言っては身も蓋もありません。ご本人は真剣ですし、作ってしまったからにはこれからどうするかを考えるしかありません。
そんなとき私はいつもこう言います。「特定できる使用者を探しましょう」。そうです、特定できる使用者は文字通りどこのどなたかが特定できる顧客で、ここが肝心なのですが、それを「使用」する人です。
使用とは、製品や商品を自分のために使うことで、何かの用を足すことです。そこには明確に使う人の目的やメリットがあり、大袈裟に言うと不可欠なものです。
ずうっと前から私は区分けしていたことなんですが、製品や商品には二通りあって、顧客にとって必要不可欠なものとそうでないものがあると思うのです。
必要不可欠なものとは、それを使わないと支障があるから使うもので、顧客の事業なり業務に深い関係のあるもの、つまり生産財です。また、そうでないものとは嗜好品など、どちらかと言うと個人的な欲望によるもの、つまり、消費財です。
この生産財・消費財いずれの製品や商品も。世の中には必要なのかも知れませんが、使用と消費という区分でみると、特定できる顧客が見えて来ます。作ってしまった後で顧客を探すのも変ですが、不特定多数の消費者にご案内をするより、特定できる業務者を探すほうがはるかに効率的です。製品や商品がある目的のために有用なら、例え数は多くないにしても、その価値は使用者には理解出来るものであり、単純な値下げ要求は出にくいものです。
このように、生産財と消費財、使用と消費の区別はとても大切な事で、一見、消費財のような分野でも、顧客に必要不可欠なものと理解してもらえれば、それはその顧客にとって生産財と同じ位置付けになり、業務のために使用するものとなります。
確かに、コマーシャルが派手に流され、タレントが商品を手にする姿は、一見すると絶好調に見えますが、逆に言えば、それだけ宣伝しないと買ってくれないということです。しかし、多くの事業者が使う業務用の道具やシステムはそれ程宣伝しなくても売れています。良いものほど業界で有名になり、いつしかその業界の標準的なものとなって行くのです。
バブルがはじけて、今の日本は経済的な成長は見込めません。しかし、それを穏やかな経済均衡時代と考えると、そんなに捨てたものではありません。何故かと言うと、バブルの時代は言うなれば「素人がはしゃいだ時代」で、誰でもお金目当てに浮ついた時代だったのです。そのとき、本当のプロは足元をしっかり固め、むしろ強くなった企業もあるくらいです。
今こそ、プロフェッショナルの時代。そう考えると、本当の顧客の姿が鮮明に見えてくるのです。