【Vol.85】人脈は商脈

 セミナーの後のパーティで、「なぁんだそうだったのか」と大笑いしてしまいました。このセミナーを通じて知り合った初対面の方が、今、ビジネスでお付き合いしている企業、つまり私のクライアントだったのです。そうとは知らずに話し始めたのですが、その企業の技術や人材、経営トップの人柄など、当たり前ですが私の好きなタイプなんです。ですから、その方が話す内容は私にも良く理解でき、こちらもすっかり盛り上がってしまいました。
 要するに、その方とクライアントは波長がぴったりと合った訳ですから、私とも波長が合ったのは当然です。こうなれば、共同開発も上手く行くに決まっています。更に、いろいろと話すうちに他のクライアントも参加した方が余良いと分かり、益々盛り上がったという訳です。

 さて、ひとしきりの歓談が終わり、ふっと考えました。あることに気付いたのです。それは、お金の話が全く出なかったのです。そうです、大抵はビジネスの話になると当たり前のように、「コストが安くなければダメ」、「他と比べて安い方がいい」と、決まってコストの話が出るものです。技術やノウハウ、優れた人材、経営者の人格、それぞれは満足なのに、コストの話になると途端に黙ってしまうのが、今の日本の現実なのに、それが出ないのです。楽しく且つ充実した内容の会話の中に、その肝心な話が出なかったのは何故か。そう考えると、嬉しくもちょっと不思議な気もしました。

 仮説ですが、私なりにこう考えました。それは、人脈という「絆」が私達をキチッと繋いでしまったのえはないかと思うのです。協業してビジネスを考える私達は、ある意味で運命共同体ですが、その最も大切な(従来の常識では)コストの話を、信頼関係という絆が不要の議論にしてしまったのです。大体、コストを幾ら勘案しても数十?も違う訳はありません。今まで、その些少の部分の議論に大きなパワーを投入しても、じゃあ、それでいくら儲かったのかと言えば、文字通り高が知れている話だったのではないでしょうか。
 私達は多くの場合、この、高が知れていることなのにわずかなコストダウンに費やす中で本質を見失ってしまうのです。この場合の本質とは、協業関係でお互いの長所を出し合う、その信頼関係の醸造です。

 私達は当日には偶然とも思える人脈という糸で繋がれ、実は、見事なまでの信頼関係を一瞬のうちに構築したのです。

 ならば、人脈は商脈。
 そう考えるとちょっとしたパーティもバカには出来ません。

 さあ、今夜もちょいとイッパイ、出かけましょうかネ・・・。ヒッ、ヒッ。