【Vol.73】超成熟産業のビジネスチャンス

 自動車教習所に通い始めて1ヶ月になります。好きなクルマに乗るための免許が必要になったからです。あちこち探して、一番電話の応対が良かった教習所です。教えてくれる先生や職員の方々は思ったより親切で、初めて(普通免許は試験場にぶっつけ本番で取りました)の私でも何とか仮免許も取れました。そこで、教習時間の合間に気付いた事があります。

 もう夏休みも終わって、生徒さんには高校生は見当たりません。生徒の多くは比較的時間の余裕がある大学生や専門学校生、そして社会人です。やはりこのご時世でしょうか、社会人は殆どが2種免許を取りに来た人や大型、そして牽引免許を目指す人も結構います。その中で私が興味深く見ている(見守っていると言っていいかも)方がいます。
 初老の女性で、半身が不自由な方です。付き添いの方がいつも一緒で、どうやら娘さんのようです。仲良しになった先生に聞くと、大病をされた後の第二の人生を、車の運転が出来るようになって自立するのが夢とのこと。私は大いに応援したくなりました。一生懸命、不自由な身体を引きずるように教習車に乗り込み、ハッキリ言ってヨタヨタ走るのを見ていると、思わず「がんばって!」と声を掛けたくなるくらいです。

 あるとき路上教習でこの話をしたところ、「そういう生徒さんが増えているんですよ」と先生が言われます。続けて私が「それなら、これから教習所も大入り満員ですネ」と言うと、先生は不思議な顔をして、「そんな事ありませんよ、うちはやはり若い人が来てくれなけりゃ」と言われます。

 皆さんはどう思われますか。私はこの様な生徒さんが増える事の方が、絶対に利益をもたらす事に繋がり、また必要なことだと思うのです。少子高齢化の波は、私が気付かなかった自動車教習所にも及び、そしてその波は益々大きくなるばかりのようです。人生90年の時代を迎え、定年後も、病後も、離婚後も子離れ後も…、要は長い人生をどう過ごすかが大切です。そういう視点で見ると、教習所のような一見「超成熟産業」に素晴らしいビジネスチャンスが眠っているのではないかと思うのです。クルマも高齢者や障害者に優しくなっていますし、60・70歳になってから運転免許証取得にチャレンジするのもおかしな事ではありません。

 超成熟産業。私達の身の回りに溢れてはいませんか。
言い換えれば「ダメだダメだ」と言っている業種です。受験生が少なくなっている大学もそうかも知れません。家内が入院して、付き添う私のベッドの手配が出来ないような病院もそうです。要は、従来型の顧客ばかりが重要だと決め込んでいる業種です。高校生が減る、患者さんが減る、そんなこと当り前です。
 だからこそ、その周辺の潜在的顧客を重視する。たったそれだけのことで新しい可能性が広がって行くのです。

 さあ、超成熟産業に注目しましょう!