【Vol.24】技術移転の相手先

 いつも申し上げることですが、技術移転の相手先企業として不可欠な条件は、ヒト・モノ・カネが揃っていることです。厳しい言い方で恐縮ですが、そうでないと、せっかくの優れた開放特許や技術・ノウハウも、具体的な商品やサービス、事業に繋がって行かないからです。
 いくら情熱があっても、開発する基本的な体力・経営資源がなければ、宝の持ち腐れとなってしまいます。開発にはコストが必要ですし、何といっても様々な困難が伴うのです。ここで、基礎体力がないと、すぐに弱気になったり、疑心暗鬼になり、ひいては肝心な開発の目的=ビジネスの創造という、明確な意志が揺らぐことになるのです。

 ですから、私どもは一般的な意味で言うところの「ベンチャー企業」に移転先を求めることを、殆どしなかったというのが現状です。いわゆるベンチャー企業の方々は、確かに情熱に溢れ、その前向きな姿勢には敬意を表したいのですが、ビジネスの実行力としては、いささか不安を感じてしまうからです。
 ご批判を覚悟で申し上げれば、技術移転の目的は、本業がきちっとしている企業を、技術移転という手段で、さらに「活性化」していただこうというもので、低迷している企業を「再生」しようとするものではありません。そうして、活性化した企業はその影響力を広げて、周辺の企業も活性化して行く。という構図が良いと考えての事です。

 私は、相手先を探すときにはこの点を重視して、移転元とお引き合わせをするようにしていますが、もう一つ大きな要素があります。それは、トップの理解です。いくらこちらが頑張っても、肝心なトップの理解と集中度が低ければ、到底、良い結果は得られません。開発の全責任はトップにあると申し上げているのはこの為です。
 翻って、お手伝いする側の全責任がこの私にあることは、言うまでもありません。