【Vol.25】動脈硬化

 セミナーのテキストを整理していて、改めて確信しました。今回のセミナーのテーマは、企業のIP(知的財産権)戦略を見直そうというものです。
 問題提起として、何故に、今この時期に知財戦略が重要なのか解説するのですが、要は、企業、特にメーカーが永々として作り上げた「大量生産システム」の「供給の仕組み」が行き詰まってしまい、もう自立の道しかないだろう。だから、知的財産権を確保して自己責任で生き抜こう、という論旨です。
 品質が良いのは当たり前、コストが安いのも、納期を守るのも何処のレベルも大差なし。どうやら、供給側、つまりポンプの方ですべき事はやり尽くした感さえあります。
 ついこの間まで企業は、「良品」を生産すれば黙っていても売れると思っていました。ところが、流通業者が変になり、小売業者や末端のお店も廃業したりと、もはや、企業が一生懸命にモノづくりやサービスの供給をしたところで、その供給パイプがどうしようもない「動脈硬化」に陥っている…。
 こんな流れでセミナーの構成を考えているのですが、IP戦略についてはセミナーで詳しくお話しますが、この動脈硬化現象について、私たちは真剣に認識しておく必要があると思います。

 「供給」という意味は文字通り、生み出す側がモノゴトを送り続ける行為です。そして、我が国ではその生産性や配送効率を上げるため、逆流しないような工夫をしてきたのが特長です。
 「ジャストインタイム」などはその一例かも知れません。必要なとき、必要な量を、時間通りに届けるシステムは、正に、ムダの無い効率的な事として受け入れられました。しかし、このシステムのアキレス腱は大量生産には対応が出来るものの、少量多品種生産になると、たちまち非効率的になり、下請け企業の負担が増加します。まるで、整然と列を作って黙々と歩く行進の中で、誰かが立ち止まったら皆がつまずいてしまうようなものです。

 このようなとき、誰かがつまずいた人を優しく抱き抱え、必要なら流れに逆らっても歩ける仕組みが、今、必要ではないのでしょうか。