【Vol.185】官民交流の成果

 特許庁の現職職員が、弊社にインターンシップに来るようになって、早4年目。
 当時の特許庁長官に、「職員にビジネス感覚を身に付けさせるならSIに、そして私と一緒にクライアントを回るのが一番」と申し上げたのがきっかけでした。「5人くらいは引き受けますよ」が、いくらなんでもSIだけに集中するのはマズイとなって、派遣先5ヶ所のうちの一つになったのです。
 ですけど、今も正直な話、全員がSIに来ればよかったのに、と思っています。公務員がビジネスの世界を知れば鬼に金棒です。行政設計だって指導だって、産業界の実態を特許庁の現職が見て理解すれば、プロパテント(知財重視)経営の本質が分かり、産業振興に資するに決まっています。

 先ずはビジネス界の実態を知って頂きたいと、その一心で始めたインターンシップなのです。
 で、成果はどうかというと、これがバンバン。うちに来られた方は全員がビジネス界の生々しい実態を見てビックリしたり、感動したり、共感したり、本当に勉強になっているようです。中には「人生観が変わった」と、更なるスキルアップを目指して留学された方も居られます。
 今回のインターン生も大変に熱心でした。第一、私たちと一緒に毎日クライアント先に訪問するのですから、それこそ九州から北海道(今回はタイミングが合わず行けませんでした)まで、早朝から深夜まで移動することになり、気力と体力が試されます。お役所の中にいることの方が多い勤務、いきなり毎日出張なのですから大変です。多分、毎朝4時起きしないと間に合わなかった筈ですが、難なくこなし、何より、意欲的に勉強しようという姿勢を感じました。
 旅の途中で、インターン生がこのように話してくれました。「中小企業の経営者やご担当の方々が、紳士的で一生懸命に開発に取り組んでいる現場の姿を見て、ああ、この国も捨てたものではない。これだけの知恵が有り、チカラがあるのだから、大丈夫だと思いました。そして、この日本を益々愛おしくなりました」。

私は涙が出るほど嬉しくなりました。そうですよ、そうなんです。この国の多くの人達は一生懸命に働いているし、知恵もあるのですから変な国に負ける訳はありません。そのことにインターン生は気付き、私に教えてくれたのです。困難を乗り越えて開発を進めるためには志や信念が不可欠です。それは、この国を愛おしいと思う心に支えられた心情だったのです。私たちは中小企業を回っているうちに、大事なことに改めて気付いたのです。

 なぜか、官は民の為にあると言いながら、官と民の交流は低調です。と言うより、交流してはいけないというような状況です。
 しかし、交流すると分かるのですが、官である公務員の視点はただ一点、どうしたら産業振興になるのか(特に経産省は)ということなのです。産業界の現場を知れば、どのような施策が必要なのか直ぐ分かるようになりますし、支援すべき相手先も直ぐに分かります。官と民がもっと近い関係になることが、実は産業振興の第一歩なのです。そして、それを遂行するための心情が、国を愛おしいと思う心なのです。
>
 如何でしょうか皆さん、官民交流の成果、素晴らしいとは思いませんか。
 この国を愛おしいと思う公務員の方々が増えれば増えるほど、もっともっとこの国は良くなるのです。