【Vol.67】決められない人たち

 歯痒い(はがゆい)という言葉があります。思うようにならないので、心が苛立ち、もどかしい状態です。じれったいとも言います。最近、そう思うことが増えたように思うのは私だけでしょうか。
 どこかの領事館で起こった事件や、企業の不正についての事実を公表するときのお偉い方や経営陣の態度、言い方、そして責任の取り方など、「えーいっ、もういい加減にしてくれ!」と、テレビの前で叫んでしまいます。要は、自分で正しいと思うなら、間違ってもいいから自分の言葉で話して欲しい。大事なことは自分で決めろ、と言いたいのです。いい年をして、誰が作った原稿だか知りませんが、出された紙をそのまま読む。もう、それだけではだーれも信用する訳はありません。

 一体、いつからこんな人たちが増えてしまったのでしょうか。企業や組織、機関のトップにまで登りつめて来た人たちのはずが、何で、大切な事一つ自分で決められないのでしょうか。私の周りには、決して大企業ではありませんがキチンと決める時は決めるトップが大勢いらっしゃるのに、何でテレビに出るようなお偉い方々がダメなのでしょうか。そりゃあ確かに有名大学を出て、順調に出世して来たのでしょうが、あなたの人生で本当に自分の事を自分で決めた事が有ったのか、と聞いてみたいくらいです。
 皆さんもお気付きのように、今、この国で一番問題になっているのは、対応の遅さ、手際の悪さ、そして、当り障りの無いようにする、「事なかれ主義」そのものです。在任中に起こった不祥事も、退任後となれば知らん振りをする。そんな経営トップが後を絶ちません。それは、在任中には何ら重大決定にも、自分だけで決める場面が、恐らく殆ど無かったからではないでしょうか。大事な事も、本当は優秀な取り巻きが決めてしまい、ただ言いなりになっていたのではないでしょうか。そして、手柄だけは自分のものにする。そんな出世テクニックだけが長けていても、肝心な時にオロオロしていては、シャレにもなりません。

 当り前ですが、自分で決めた事だったら、責任を感じるはずです。そして、責任を感じれば、どうすればいいかは自ずと判る筈です。「出処進退は自分で決めるハズです」と、疑惑にまみれたかつての同僚議員に、他人事のように繰り返して言うばかりの政治家に、「もう、あなたも含めて皆で辞めてくれ!」と、テレビに向かってお願いする私は変わり者なのでしょうか。

 そう考えている私に、最近入社した新人秘書が、「多喜さん、行き先を決めるなら早めにしてくださいね。決まらないと困るんですから」。と、極めて事務的に、且つ冷たく言い放つのでした…。ああぁ