中国電力さんがやってくれました。地元の、志あるベンチャー企業の育成を本気で支援する事業、「SOHO国泰寺クラブ」を立ち上げたのです。
事業の概要は、先ず、中国地域全域(正確には全国)から、広島で起業もしくは進出したいと考えているベンチャー企業を公募し、その中からやる気のあるベンチャー企業を選考して、オフィスと通信インフラ、その上事務局をも設置して、人的な支援もするというものです。
国泰寺という立地は、広島のオフィス街の中心にあり、普通に借りるのなら、とてもベンチャー企業には手の出ない絶好の環境です。また、ベンチャー企業に軒先を貸す類の話なら結構あるのですが、何より感心したのは、ベンチャー企業を「選考」するというところです。
ご存知のように、従来のベンチャーもしくは中小企業の支援施策は、「格差是正」であり、良いも悪いも底上げしようというものでした。ですから、本当にやる気のある中小企業や、将来性のあるベンチャー企業に、支援が回らないことも、多々あったように思っていたところです。
そのような、閉塞状況の中で打ち出された、今回の中国電力さんの支援事業は、「本気のベンチャー企業」に対して、オフィスも破格の低賃料で貸し出し、人的な支援も惜しまないという、支援側も真正面から取り組む、本気の「選択的支援」事業です。
そして、何と、私はその本気の事業に応募して来たベンチャー企業を審査する、審査委員長に任命されてしまったのです。支援する側も本気、応募するベンチャー企業も本気。要するに皆本気の事業の中で、ベンチャー企業を選考するという、大切な役目を仰せ付かったのです。こうなったら、審査する側も本気でするしかありません。
審査の日、緊張した面持ちで審査員の前に座るベンチャー企業の経営者は、まるで受験の際の「親子面接」のような感じです。そして、真正面を見据える眼差しは、審査するこちら側も厳しくチェックされているような、まさしく、ベンチャーの大仕事、創業の第一歩です。審査会は、文字通り真剣勝負のピンとした雰囲気の中で行われました。
無事に10数社中8社を選考するという大任を果たし、帰りの飛行機の中で、ずっと昔の、自分の創業当時のことを振り返ってみました。私は学生時代に開発の仕事を始めた、今で言う「学生ベンチャー」のような創業でしたが、当時は支援する機関や仕組みも無く、まして、今回のような大企業が支援することなどはありませんでした。正直、今のベンチャー企業は恵まれていると思うのですが、逆に、その選考委員になったという、今の自分の立場に不思議な縁を感じました。
「お前も30年前はあんな感じだったのだ」。
今回の審査会は、「いくつになってもベンチャー魂を忘れるな」と、神様がセットしてくれた勉強会かもしれません。