【Vol.43】「中抜き」の代償

 物流の劇的な合理化が進んでいると言われています。
 メーカーから出荷された商品が、たらい回しとまでは言わないが、複数の卸業者を経て小売業者にわたり、消費者に販売される。この間に、中間業者が多くの利益を上乗せする結果、消費者が不当に高い物を買わされている。物価が高いのは、この、わが国独自の流通システムに問題があるのだ。…と言った論調の意見をよく聞きます。
  確かに私もこのようなことを実際に経験したことがあり、しかも、一回や二回ではありません。商品を開発し、「さあ販売」と、なった途端に、いくつもの卸業者が介在し、ビックリするほどの小売価格になることが、本当にあるのです。「売るためにはしょうがない」。「売ってくれるのだから」。とは言うものの、只、マージンだけを受け取っている、としか理解できないことがあり、商習慣と言うには、あまりにも理不尽です。

 このような反省からか、中間物流業者をなるべく省くように、作り手(供給側)からユーザーへの中間に位置する物流業者を、ことごとく排除した結果が、冒頭に申し上げた、劇的な合理化だということです。
 でも、そう言いながら、中間物流業者を排除した、つまり、「中抜き」の結果は、本当に私達の利益に適うものなのか、疑問に思うことが時々あるのです。この間も、自動車関連商品を買おうと、店員さんにその商品の説明を求めると、「メーカーに訊かないと分かりません」との返事です。私は、すっかり買う気が失せて、小売店が商品の概要を知らないとは何事か、と一人憤慨した次第です。

 しかし、フッと考えると、メーカーから大量に仕入れた商品の知識を、全て覚えている店員さんなんている筈が無いでしょうし、メーカーだってそんな暇はありません。つまり現代では、大量生産、大量消費に慣れ切った挙句、肝心の商品知識が疎かになり、結果、ユーザーが離れて行くような現象が、実は、深く静かに進行しているように思うのです。同じような商品が大量に並び、誰もが買うから、自分も買う。そんなユーザーばかりである筈は無いのに、店員さんはと言えば、勉強する暇も無い。
 実は、ずっと以前は、問屋さん等の中間卸業者がしっかりと商品を見定め、小売店に教育していたのではないでしょうか。問屋さんの仕事は、ただの卸売りではなく、実は商品の発掘と、その商品のメリットを正しく理解し、商品の本当の付加価値を、小売店に教えた事だと思うのです。そして、小売店は、その付加価値をユーザーに適切に説明することで、ユーザーにとって自分に最も適した商品を購入することが出来たのです。
 そう、安くなくても、最適なものを入手することが、本当のカイモノです。

 いつから、変わったのかは分かりませんが、要は、中抜きの結果、小売店の販売能力、それもソフトの面が、大きくパワーダウンしたような気がします。ローコストオペレーションを追求するあまり、人件費を縮め、ただ突っ立っているだけの店員さんが増え、結果として本物のユーザーが逃げて行く…。 
 
 訊けば何でも応えてくれて、少しお節介くらいな店員さんのいる店が繁盛する。
 そんな、時代に戻れませんかネ。