【Vol.21】学生の目

 立教大学での特別公開講座「会社を起こす」も、三年目になりました。初年度は、開講に苦労された廣江教授も学生も手探り状態のスタートで、あっという間に一年が過ぎました。それでも、締め括りの起業アイデア発表からは、特許出願まで行く新商品アイデアも出て、まずまずの成果でした。
 全て学外から選任された講師陣で、中小企業の経営者や、話題のIT関連企業のトップであったり、実に多彩です。今年度も、今売出しの経営者が登場するので、私も学生の側に回って聴講したいくらいです。
 私のコマは4時限あり、主に「起業のための本質的な着眼点」や「自立」というテーマで講義します。それに基づき、学生からは具体的な新事業・新商品のアイデアを発表させるといった構成です。
 数百人の応募者から選抜される受講生は、もともと優秀ですが、今年度の学生は特に優秀で、理解が早く、質問も的確かつ鋭いものが多く、こちらも真剣勝負です。ピンと張り詰めた空気はとても爽やかで、学生には精一杯、自分の経験を伝えたい気持ちになれる雰囲気です。
 講義する、私を見つめる学生たちの目は、とても澄んでいます。よく聞く「いまどきの学生は…」など、何処の話だろうと思うくらいです。講師と聴く側の学生には一体感があり、お互いの時間を共有している手応えがあるのです。
 昔、剣道の恩師が「下に学べ」と言われたことを思い出しました。そうです、学生に向かって話をする私の方が、実は、学んでいるのです。1時限は90分間ですが、瞬く間に過ぎてしまいます。剣道のように体に汗はかきませんが、清々しい心の汗を拭いながら帰る気分は格別です。

 立教大学での講座は、私の気持ちの中にある「青色インキ」を分泌してくれるのです。