【Vol.307】親の背中の見方

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 近頃、気になることがあります。 社長の跡継ぎになろうというご子息が、継承するのを嫌がるケースが多いのです。私としては、しっかり引き継げば経営者になれるのですから、むしろチャンスだと思うのですが、逆に嫌だと言うのです。
 どこかの大手家具屋さんのお父さんと娘さんのように、やりたいばかりで揉めるのも困りますが、経営者になる機会など、そんなに有ることではありません。ですから、恵まれていると思うのですが、断るなんて、本当にもったいないと思うのです。
 あえてご子息と言うのは、圧倒的に息子さんが多いのです。娘さんの場合は、むしろ自分から手をあげるケースが多いようです。出来る娘は、父親(母親も)の背中を見ながら、いつか自分もビジネスの先頭に立ちたい、そのような気概を持って育ったのでしょうか。
 その点、息子さんの方は、親の背中に苦労や苦悩を感じ、自分には耐える資質が無いと、最初から諦めているような感じです。

 どうしてそうなるのか。どうも、親の背中の見方があるように思います。

 親の背中、つまり親子の関係の中で、自分を育ててくれながら事業に向かう親を見るとき、男性と女性では、その感じ方に違いがあるようです。
 私の偏見かもしれませんが、男性は、親の経営姿勢を「戦い」と捉え、女性は「育成」とみているような気がします。
 つまり、息子は親が戦って苦労していると見て、娘は会社を育てていると見る、と言えるのではないかと思うのです。もっと言えば、男性は戦闘的で、女性には母性があるという、その違いではないかと思うのです。
 ですから、経営を勝った負けたと考える男性は、そもそもが厭戦(えんせん・戦争を嫌だと思うこと)気分になっているので、嫌なのです。
 女性は、経営とは会社を育て上げること、と考えているので、自分にも出来るのではないか、いや、育ててみたいという気持ちになるのではないでしょうか。

 勝手な言い分かも知れませんが、このようなことと理解すれば、事業を継承するまでの親の背中の見方、それは、親が会社を、外敵と戦う砦としているか、事業を育てる施設としているか、その見方によって変わります。
 逆の立場で言えば、親は子に向かって、常に、会社とは、事業を育てるものだという姿勢を見せるといいのです。
 先にも書いた、どこぞの大手家具屋さんの親娘の争いも、会社を守って競争に勝ち抜くと言う父親と、新しい会社に育てようと言う娘、その違いであると理解すれば、その争点は明快です。

 如何でしょうか。

 親が経営者で、自分がその事業を継承するかどうか迷った時、
それは、親の事業に向かう姿勢を見ればスッキリします。
 親が戦っているのなら、自分は育てる経営をすればいいし、育てているなら、自分は更に育めばいい、ということではないでしょうか。

 そうして、少子高齢化が進む社会で、元気な会社を継承して欲しいものです。