【Vol.216】復旧の活気

 100年に一度、未曾有の大不況に遭遇して、もう一年、やっと(ドン)底が見えたようです。未だに、その底さえ見えない企業も多いのでしょうが、お陰様と言いましょうか、クライアントには活気が戻ってきました。
 長いような短いようなこの一年、去年の9月までの「絶好調」が、一瞬にして「絶不調」になってしまったのですから、クライアントにとっては、たったの一年で、天国と地獄の、両方を経験したという訳です。

 勿論、昨年の9月以前には戻るべくもありませんが、クライアントの中には、4割くらいに戻ってきたところも出て参りました。嬉しいことです。今は、とても言えませんが、数年後には、「あんなこともあったよなぁ」と言えることを願うばかりです。
 さて、立ち直りつつあるクライアント、よく見ると、あることに気付きました。売り上げ的には4割なんですが、現場は、ほぼフル操業なのです。 変じゃないか、売り上げは4割なのに現場は10割だなんて、一体、どういうことだ、と仰る方も多いでしょうが、これにはちゃんとした訳があるのです。
 答えは簡単、いわゆる派遣社員が全くいない現場、全員が正社員でフル操業なのです。「現場応援」というのですが、それこそ、ホワイトカラーまでが現場に出ています。
 慣れない現場で、汗を流しながら頑張っている姿を見ると、何か初々しい感じもして、ハツラツとした活気を感じます。

 前にも書きましたが、無理やり作った右肩上がりの経済成長、それが破綻した途端に、奈落の底に落ちたような絶壁落下。崖の底に激突して、しばらくは気絶状態でしたが、ようやく気を取り直して、さあ、これから元の崖の上に登って行くぞ、でも、誰の手も借りずに自分の力で登っていこう、そんな感じの現場応援です。
 そうなんです、よく見ると、去年までのフル操業と、今のフル操業、そこが違うだけなのです。逆に言えば、それだけ、去年の今頃まで、派遣社員に依存していたということで、ある意味で、企業にとっては、今の姿が適正な操業状態なのかもしれません。
 ところで、活気に溢れ、文字通り額に汗して頑張る社員の方々を見ていると、あることを思い出しました。

 もう何十年前でしょうか、私がハタチの頃です。記録的な豪雨の後の大洪水、胸の高さまで水に浸かった、あの大水害を思い出したのです。
 活気と水害、何のことだ、と思われるかもしれませんが、水害復旧の活気と、クライアントの現場の活気、同じように感じたのです。
 大水害に遭って、そんな活気がある訳はないだろうと言われるかもしれませんが、ウソではありません。確かに、水が引いた後の泥沼状態、悲惨ではありましたが、そこにいる者は全員、明るい活気に溢れていたのを思い出したのです。

 お分かりでしょうか、実は、この不況も水害も、ある共通点があるのです。それは、誰も予想しない、或いは備えが出来なかったという点です。
 要は、この不況は災害と同じ、仕方のない事だと考えれば、災害から立ち直ることを復旧というのです。立ち直りつつあるクライアントにみなぎる活力、皆で助け合い、とにかく頑張ろうという連帯感、それは、災害から復旧したときの、あの活気と同じに思えるのです。

 さあ皆さん、復旧しましょう、この大不況は災害なのです。完全に元には戻せないかもしれませんが、明るく元気に復旧しましょう。それが、未来へのスタートです。
 ところで、SIの復旧作業は順調かって? 勿論、順調ですよ。少々、おなかが減ってはいますがね。ぐぅ~。