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まさに、コロナ禍で産業界はズタズタになっています。
しかし、そのような状況下でも活況な会社も多く、不謹慎かもしれませんが「コロナ様様」と思っているところも少なからずあるようです。
悲喜交々(ひきこもごも)という言葉のように、いま、世界中が困ったところと嬉しいところが複雑に入り混じった状況にあるのです。
困ってしまったところは(コロナは突然のことですから)成す術も無く、という厳しい状況ですが、上手く行っているところをよく見ますと、それは偶然ではなく、以前から、そのような備えをしていた、その結果ではないでしょうか。
例えば、新型コロナの感染を防ぐために、施設内に消毒液や抗菌剤を噴霧する、その機械を作っているメーカーがあります。
今どき、このメーカーの技術はローテクと言うと叱られますが、国内で作るより、それこそ中国に出してもいい(これは中国に叱られるかも)のではないかと思う製品です。
しかし、万が一、その外注先の都合で調達が滞ったり、調達できなくなったら、お客さんに多大な迷惑をかけることになる。
そう考えたこのメーカーは、敢えて、自社生産に拘ってきたというのです。それが、このコロナ騒ぎで大ブレーク。
なんと、この3か月間で、これまでの3年分を出荷したそうで、嬉しい悲鳴とはこういうことか、そう言って社長は笑っておられます。
なんか、マスクの話の逆のような話です。マスクが大量に必要になり、国内生産では間に合わず、というより何ともならず、唯々、中国製に頼るばかり。中には不良品を掴ませられるという、バカな話もありました。
なぜ、このメーカーは採算度外視で細々と作り続けていたのでしょうか。聞けば、当たり前のことですが、そこにはちゃんとした戦略があったのです。
当然、噴霧器だけでは採算は成り立ちません。
しかし、製品価格を採算が合うように引き上げたら、お客様は買ってくれませんし、そうかと言って、調達先の部品メーカーに部品価格を下げるよう頼んでも、そう簡単にはいきません。
部品の調達価格というのは、その協力企業さんの採算も考えれば、ある程度の数を発注しなければいけないのです。
それが、同じような部品を使って別の製品を開発した動機だというのです。
その製品のことは、詳しくは言えないのですが、聞けば、本当にナルホドというものでした。まさに、私がいつも言っている「横展開」の典型的な話です。
さて、このようなことができる本当の動機は何なのでしょうか。
それは、「会社の先行きが不安」と、いつも社長が考えているからです。
この会社、主力製品は順調に流れていて、業界では定評のある中堅企業です。でも、社長はいつも言うのです。「我が社の将来は不安です。いつもいつも心配で、今の製品が売れなくなったらどうしようか。それしか考えないのです」と。
ここに本質があるように思います。人が一番望むのは「安寧」です。中には、自分は波乱万丈でないと面白くないと言う人もいますが、それは強がり。多くの人は安心・安全、つまり安寧を求めているはずです。
しかし、その安寧を求める手段として、あえて不安を抱く、もっと言えば、「不安を探している」としたら、それは戦略になるのではないでしょうか。
如何でしょうか、私たちは今、新型コロナという脅威にさらされ、不安感でいっぱいです。でも、その不安感を逆手に取れば、それが、強くなるための戦略になるのです。