【vol.297】打ち上げ

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 最近、打ち上げを毎日することにしています。これから読まれる人は、そんなのはずうっと前からそうではないかと言われるかも知れませんが、意識するようになったのは最近です。

 元々の打ち上げの意味をおさらいしますと、打ち上げとは、芝居や相撲などの興行で、全ての日程を終了した時に使う言葉です。他に、事業や仕事の終了を祝うことであったり、また、能楽のお囃子(はやし)や歌舞伎の鳴り物の手法の一つでもありまして、演奏に一段落付ける為に調子を一段高めることで、演劇の流れを区切る演出でもあるようです。
 このような打ち上げですが、私が意識するようになったのは、最近、職場でメンタル面での問題が顕在化していると、よく聞くようになったからです。中でもうつ病が多いと言われていますが、どうも、精神的な疾患に罹る人が急増しているようです。

 実は、私も15年くらい前、仕事の関係でお付き合いのあった会社から、このような相談を受けた事がありました。その会社は、コンピュータソフトの開発会社で、SEと言われるエンジニアが、時にそのようになる事があり、その対策をどうしようかという相談でした。
 ところが、今ではそのような職種だけでなく、あらゆる職場でと言っていいほど、多くの職場で、メンタル面での問題が顕在化しているのだそうです。
 そう言われると、パワハラやセクハラなども含めて、仕事に関する実に様々な圧力やストレスが、以前とは桁外れにしかも複雑に絡み合っているのかも知れません。

 そう言う私も、以前に増して、お陰様で実に様々なご縁を頂きまして、ある意味では複雑かつ高度な人間関係が増加していると言えましょう。これを、私は本当に有難いと思っているのですが、たまに、フッと疲れを感じることがありました。それも、体力的なものではなく、精神的な疲れを感じることが多くなっていたのです。
 それなのに、私が何とかなっているのはどうしてか、そんな事を考えた時に、この打ち上げの事が自然に思い浮かんだのでした。

 どうも、私は仕事が終わると、或いは、終わりそうな時間に終わらせる(打ち合わせの流れで会食をして、そのままお開きにする)のも兼ねて、毎日打ち上げをしているのです。(笑)
 これは冗談ではなく本当の事です。メンタル面の問題が顕在化している社会状況になる以前から、私は打ち上げ重視 (笑) で毎日を終わっていたのです。自分では、ストレスなどを感じることはありませんでしたが、今になって考えると、毎日打ち上げをして無意識の内にストレスを発散させ、毎日、元気に仕事に出掛けているように思うのです。
 聞けば、メンタルの問題に悩む方は、それこそ徹夜の連続で仕事をしたり、大きな仕事を一人で抱え、誰にも相談出来ずに悩むなど、誰かと打ち上げをするような機会が無いと思われます。

 ですから、色々な事情はあるでしょうが、そのような方が周りに居たら、一日の終わりにちょっとした打ち上げをするように誘ってあげたら如何でしょうか。皆で飲むのもいいですし、お茶をするだけでもいいでしょう。とにかく、何人かで一日を打ち上げるのです。
 社会を取り巻く環境が激変する中で、私たちの仕事環境も激変しています。でも、一日一日を区切って、翌日までストレスや圧力を持ちこさない為にも、
打ち上げをするのが、有効ではないかと思うのです。

 ここまで読まれて、やはり多喜はただ呑みたいだけ、そう言われる方も居られるでしょう。でも、言い訳と思われても、私は今日も打ち上げに参ります。キリッ!