【vol.282】時期尚早で乗り遅れ

 変な話ですよ、「せっかくのご提案ですが、時期尚早と判断しました」と、私の提案を断られたのです。いつもの事ですが、ご紹介を頂いた企業には、出来るだけ早く、新事業や新商品開発の提案をすることにしています。そして、その提案がよいと判断されれば、何がしかのご契約をして、開発を進めることになるのですが、そうならない時、一度提案した内容はもうそれでおしまいで、他で同じことを提案することはありません。私としては、提案も一期一会、せっかくのご縁に集中するのです。

 ですから、上手く行くときはそれでいいし、先に進まないときは、ご縁が無かったと思うだけ、それだけの事で、他に何も想う所はありません。しかし、今回は少し違います。だって、断り方が変じゃありませんか。

 私の提案は、その企業の潜在的な経営資源を勘案し、これなら行けるというテーマを企画書にするものです。これまで、その企業がどのような事業をして来たか、その強みは何か、技術はどうか、そして何より重要と考えているのが、お付き合い先、つまり取引先や顧客です。特に、顧客はまさにお客様。そのお客様に新しい事業や商品を提供することが開発の目的です。

 ですから、今回の提案もそのあたりの情報を頂き、かなりの自信作でしたので、進めて頂けるものと考えていたのですが、「時期尚早」。一体、開発において時期尚早って、どういう意味なんでしょうか。気に入らなければ、「やりません」と言ってくれればそれでいいのです。

 時期尚早と言われて断られたのは初めての経験ですので、言われた動機と申しましょうか、なぜ時期尚早という理由にしたのかを考えてみました。

 先ず第一に、時期尚早と言えば、提案した内容の良し悪しではなく、時期的な問題であるのだからという、私への配慮であるのかもしれません。「やらない」と言うよりソフトで、タイミングの問題とすれば、それで済むと考えたのでしょう。次に、今直ぐにはやらないが、将来やる可能性を残したいのかもしれません。一度提案した企画書は、お金を頂かなくても差し上げるのが私のやり方ですから、それでも構いません。

 このように、なるべく相手先の事情を鑑み、言われた理由を考えてみたのですが、やはり、時期尚早というのは変な話です。

 いつも言うように、開発とは、顧客のニーズに対応することです。お客様が欲しい、嬉しいというニーズ(欲求)に対して、事業や商品を提供して対応することです。ですから当然の事として、お客様が欲しいと言った時に、スッと提供することが肝心でして、待たせることは機会を失うことになるのですから、開発は待ったなしなのです。なのに、時期尚早。こうして考えてみましたら、最初にそう言ってくれて良かったと思うことに致しました。だって、開発が始まってから時期尚早と言われたら、ご馳走を目の前にして「待て」と言われるワンちゃんと同じで、はやる気持ちを抑えることはできません。始まったら全力疾走、それが開発ってもんですよ。

暫くして、フッと川柳みたいな言葉が浮かんできました。

 ~ 新事業 時期尚早で 乗り遅れ ~ 

 これを、サラリーマン川柳に投稿してみようと思うのですが、如何でしょうか。