【Vol.203】竹の節

 グッと来る言葉に出会うことがあります。今回の出会いは、「竹の節(ふし)」です。
 「日経ものづくり」に執筆中の「開発の鉄人」は、中小企業の開発現場を実況中継しているようなコラムです。そこは、新事業や新商品との出会いの場でもあり、私にとっては学びのチャンスです。開発はドラマですし、登場人物の生の声が聞けるのは、役得みたいなもの、本当に有り難いと思います。そして、思わずグッと来る言葉に出会ったりします。

 今回グッと来た竹の節、そうです、あの竹の幹にある節、ちょっと太いところです。でも、この竹の節、一体、何の役目があるのか、今まで考えた事もありませんでした。そこで、調べてみましたら、そもそも竹は、1日に1メートル以上も伸びることもあるらしく、非常に生長の早い植物なのです。そして、節は竹全体の強度を支える重要な役目を持っていて、竹の生長は、幹の部分にあたる生長帯の稈(かん・中空の茎)だけが伸び、驚くことに、節は筍(たけのこ)の時からその数が決まっているのだそうです。節は、竹の強度を支える為に太さを増すことはあっても、自らは伸びることは無く、強度を保持する役目に徹しているのです。まるで畳んだ提灯を引き伸ばすように節と節の間が伸びて、竹は生長しているのです。

 さて、グッと来た言葉との出会いを再現します。取材が終っての帰りがけ、「如何ですか、今、経営は厳しくないですか」と、取材先の経営者に聴いたときです。「その通りです。本当に厳しいですよ。でもね、竹に節があるように、伸びては止まり、そしてまた伸びる。今は、その節の時代ですからね」と仰ったのです。ここで、私はグッと来たのです。
 調べてみた意味と、厳密に言えば違うのですが、如何でしょうか皆さん、竹の節と、今の経営環境とを比喩したその言葉には、何とも深い意味があるのではないでしょうか。

 経営は順調に行けば、それはそれで嬉しいことですが、取り巻く環境が変わるのは当り前、時には一寸先も読めないくらいに激変します。今回の世界的不況は100年に一度というのですから、もう、誰も想像しなかった大異変です。そこに遭遇してしまったことを、竹の節になぞらえて、今はその時代と言われたその裏に、実は大きな教示があると思います。
 確かに、今はジッと我慢の時です。節が、稈の生長を支え、竹全体の強度を支える重要な役割を果たしていると知れば、ここは、節を鍛えることに徹すべきです。まして、節の数が筍のときに決まっているのだとすれば、生長を求めて焦る必要はありません。
 企業にとって成長は大事です。しかし、成長する過程には山や谷があり、絶好調もあれば苦境の時もあります。今は、その節目とも言える変わり目、そこが肝心です。節目に差し掛かったのですから、自社の節はどうあるべきか、それを考える絶好の機会ではないでしょうか。
 企業も、節の数だけ生長すると考えれば、その節をしっかりと鍛え、節目と節目の間をどのように経営するか、それが大切だと思うのです。

 さあ皆さん、今は節目です。じっと春を待ちましょう。春は生長帯を刺激し、鍛えられた節があれば、企業はまた真っ直ぐに伸びて行くのです。
 さて、我がSIの節はどうでしょう。節がちゃんとしているか、それが問題です。そう考え始めたら、最近、手足の節々が痛むのですが、何か関係があるのでしょうか、トホホ…。