【Vol.128】適疎の国のLANDM

 もう五年くらい前になりますが、地域での直接販売システムの企画を練っていたことがあります。「ローカル・エリア・ネットワーク・ダイレクト・マーケティング」。略して「LANDM」と言います。
このLANDM(ランディーエムと読んでいます)を企画した意図は、地域には名物や名産品と言われる美味しいものやそこでしか買えないもの、或いは逆に余ってしまったものなど、要するにその地域周辺でしか流通しないものがいっぱいあるのに、案外、欲しい人には行き渡っていないのではないかという発想からでした。
ならば、ITを使って情報を配信して、物品をタイムリーにお届けしようと、双方向の情報システムを地域の家庭全てに無料で配置し、物販や情報コンテンツなどを提供しようというものです。そして、その対価の中から、ハードや通信費等の直接経費も償却できる仕組みも考えました。この企画は、今になって具体化しそうになり、私としても嬉しく思っているところです。
 ところで、今回皆さんにお伝えしたいのは、その時も、そして今でも感じているLANDM企画の本質的な背景です。この企画が成り立つ条件とでも言いましょうか、日本の国の大きさと密度について、私なりの考察があってご提案したものだったからです。

 最初、LANDM構想をお話すると、殆どの方が「地域といったらみんな過疎地域なんだから…」と言われます。
そうかも知れません。一体、この地域には人が住んでいるのだろうかと思うくらいに鄙(ひな)びた所も多いですし、車とすれ違うことが珍しいような地域もあります。しかし、だからと言って、本当に過疎(非常にまばらの意)なのでしょうか。
日本中を廻った訳ではありませんが、私の経験として、本当に人が住んでいないところは直ぐに分かります。道が無いか、もしくは道があっても往来している感じがありません。しかし、どんな地域に行っても、そのようなところは極めて稀で、人は見かけないけれど、確かな人の気配を感じるところが殆どです。恐らく、クルマで行き来しているのでしょうし、運転できない高齢者は同乗して行動しているのでしょう。また、高齢者の為の施設など、逆に過疎と言われる地域ほど豪華に充実しています。要するに、一見鄙びた感じでも、人はかなりの密度で居るのです。ただ、高齢化しているだけなのです。

 結論を言えば、この国は「適疎(てきそ)」だと思うのです。適疎という言葉などありませんが、あえて「適当なまばら」と言わせていただきましょう。
 説明します。どんなところに行っても、舗装道路があります。どんなところに行っても(以下、々々)、家が見えます。々々、宅配便が走っています。々々、役場があります。々々、送電線や電信柱があります。々々、堤防や護岸があります。々々、山の上にテレビの中継塔が見えます。々々、汚い落書きがあります。々々、…とにかく何でもあるのです。
当り前ですが、何でもある理由は、そこに人が居るからで、無人地帯では無いということです。言い換えれば、この国はどこでも居住できる地域で満たされているのです。そして、その地域間の距離は、歩いても一日以上かかるような所は殆ど無いのです。

 よく考えれば分かります。この国は、本当に大きさと人の密度が適度なんです。その気になれば歩いて行ける距離に、丁度良いくらいまばらに人が居る。ですからそこに、この国ならはの新しいサービスが成り立つのです。
 LANDMは適疎の国のニュービジネスです。