【Vol.33】「モジュール化の本質」その2

 モジュール化現象は、既に多くのビジネスで顕在化しています。
 「アスクル」という宅配サービスがあります。最近、我が家にもカタログが配達され、娘の文房具や家庭用品を購入するようになりました。この、ビッグビジネスになった文具・事務用品宅配サービスの経営主体が、実は事務用品メーカーであることも知られるようになりました。
 私は、この大きな成功を収めているビジネスの本質が、実はモジュール化であると見ています。
 勿論、成功の要因はその品揃えであり、経営者であるメーカー以外の商品を多数扱っていることに異論はありません。しかし、成功の本質は、日常的に使う文具品や事務用品全般を、仕事をする為の「ツールユニット」と考え、他のメーカーの商品をも取込み、顧客の為の「モジュール化」、つまり品揃えをして、中間流通業者を使わずに宅配する、顧客との距離を最短にするシステムを確立したことにあると思うのです。私たち顧客にとって、こんな便利な業者がいたでしょうか。宅配業者や通信販売業者がこれだけあったのに、アスクルだけが成功したのは、このビジネス原理に気付いたからに違いありません。

 他にもこのビジネス原理に気付き、成功している企業があります。
 自動車メーカーからの試作を、部品単体の機械加工による試作品を作るだけでなく、プレスや成型品を複合化し、機能的にモジュール化した製品試作として納めて成功している会社。新作CDのジャケットに使う特殊インキを開発し、そのインキを使ってもらうために、他の下請け企業との調整役をしていたら、その働き振りが認められ、次の新作CDまるごとの企画制作を依頼された会社。介護をしながら、患者さんの周辺サービスも提供している会社等々。これらの会社に共通する、根源的な成功要因は、ビジネス原理であるモジュール化に気付き、顧客との距離を縮めた結果であるということです。

 こうして考えると、わが国はモジュール化が最も進め易い国であることに気付きました。なぜかと言うと、適当に狭い国土なので、集約した商品・サービスを届けるのに苦労がありませんし、IT(情報通信技術)化が進めば、あらゆる業務が簡略化され、いずれも、顧客との距離を物理的にも精神的にも縮められる、程好い環境にあるからです。