【Vol.27】ビジネスの赤い糸

 この間、不思議な体験をしました。あるクライアントから何気なく口に出た開発案件が、実は別のクライアントで精力的に進めていたテーマと、殆ど同じと言っていいくらい、関連するのです。このクライアントは、それぞれお互いには何の取り引きもなく、勿論、私も守秘義務があるので、開発の内容を他のクライアントに言う筈はありません。しかし、両社の目指すところのビジネスは、極めて近いものでした。更にこの二社は、互いに協調すれば、大袈裟に言うと「向かうところ敵無し」と言っていいほど、強力な連合軍が構成されるメンツなのです。

 さあこうなると、「ビジネス・プロデューサー魂」しかありません。すぐさま帰りの車の中から片方のクライアントに、「実は…」と切り出しました。両社のビジネスの将来性と可能性、ビジネスの具体的な手法…等、それらが完璧に協調できる関係にあり、しかも積極的に連携すれば、まさに相乗効果が期待されることを説明したのです。
 一瞬、唖然とした社長が、「そうならば、ぜひ一緒にやれるようにお引き合わせ願います」。私としては、「とんでもない」と言われずに、ホッといたしました。と、同時に「よし、やるぞ」と、大いに気合いが入りました。

 一言で言えば、これがビジネス・プロデューサーの醍醐味です。手柄話のようで恐縮ですが、時代が要求するニーズをしっかりと捕まえているという、手応えは心地良いものです。しかしそれ以上に、このように不思議な「赤い糸」のご縁を感じるときが、私にとっては最高に爽快で幸せな気分になれるときなのです。

 実は、こんなことばっかりではありません。正直、うまく行かないときも沢山あります。そんなとき私は、ご迷惑をかけたクライアントのお顔を思い浮べながら、もう一度、どうしたら赤い糸を紡ぐことができるのか考えます。
 これも、ビジネス・プロデューサー魂です。