【Vol.17】組織がやっかいだ

 新年度が始まるこのころはいろんな事が起こります。まさに悲喜こもごも。めでたいご卒業やお入学も、それはそれで大事件ですが、ビジネスマンの周辺にも、この季節には大小様々な事件があるのです。私にとっての事件は組織に絡むことでした。会社や学校、お役所、それぞれに組織というものがあります。最近、この組織について考えさせられることがあったのです。

 あるプロジェクトの進行に関連したことです。これまで約3年間継続して来て、さあ、これから…というのに、プロジェクトを牽引してきたご担当の配転をいいことに、その後任を決めず、済し崩し的にプロジェクトを止めようと図っているという話です。
 ご担当の方から、深刻な顔で私に相談があり、初めて知りました。傍目にはうまく行っていて、何の不足も無いと思っていたそのプロジェクトが、実は、当初から反対派も多く、この年度代わりをチャンスとばかり、大反撃が始まったというわけです。
 新しいことが始まると、どこにもそのような人がいるものです。つまり、何の変化も好まない人たちが、自分たちの居心地が悪くなり、結果、弾き出されるのではないかという、疑心暗鬼が生じるのでしょう。そして、その一派は猜疑心という共通思想によって結託するのです。結託しても、じっとして動かなければいいのですが、妄想が恐怖心に変わってパワーアップしたおじさん達の行動力は侮れません。プロジェクトを潰すために、組織の力で対抗するのです。プロジェクトは全体の一部の人員によって構成されています。したがって、組織上何も知らない人もいます。この隙間をついて組織的に動くのです。表向きプロジェクトには反対せず、人事部に組織上の上司からはたらきかけて、実行部隊を弱体化する高等戦術なのです。

 我が方の対抗策についてご提案しました。「それならば、組織には関係のないところで、残されたプロジェクトのメンバーに個人的に協力したらどうですか」と申し上げました。組織的にはプロジェクトに関われないのなら、個人的に動けばいいのです。自分を信じて、それが会社の為に本当に大切なことだと思うのなら。本質はそこだと思うのです。
 「組織ってやっかいですね」。笑いながら言うと、ご担当は大きく頷いて、やる気満々の顔になりました。