【Vol.14】「業私混同」のすすめ

 公私混同という言葉があります。「公」は公務、つまり仕事のことを言い、「私」はプライベートな部分を言うのでしょう。
 先日、何気なく使っているこの言葉について考えることがありました。クライアント先での酒席です。ご担当の方が、「うちの社長は飲み会で仕事の話をして困るんですよ」。それを聞いた社長が「仕事以外に何を話すんだ」。かなりお酒が入っていて、お互いに笑いながらの事ですが、ご担当が優勢です。続けて、「君たちとは仕事で付き合っているのであって、家族の付き合いをしたい訳ではない」。ここまで社長が言うと、ちょっぴり気まずい空気が漂いました。
 その場はそれで済んだのですが、微酔いの電車で考えました。よく、「社員とは家族のような関係で行きたい」と言う方がいらっしゃいます。でも、家族の関係とは、親や配偶者・子供と共に暮らすと言う関係であり、完全に私的な関係ではないでしょうか。確かに、和気あいあいが良いとは言うものの、そこには仕事を厳粛に進めるという、会社の目的とは矛盾するような気がします。

 果たして、仕事で公私混同などあり得るのでしょうか。仕事をするのは企業人として当然のことで、それが公的なのか私的であるか、議論の余地などありません。どうやら、私たちは良いムードで仕事ができる環境を求めることと、仕事の目的とを「混同」しているようです。
 「公」(仕事)に「私」(プライベートな気持ち)を持ち込んで甘え合う公私混同は、誰のためにもなりません。私は仕事をする目的は、まず会社に利益をもたらし、結果、報酬を得て家族を養うことと思っています。その視点で言えば、仕事は完全に私的な目的の為にすることです。
 誰でも家族があれば、その愛する家族の為に働くのです。そうして一生懸命働く人が、本当にプロの仕事をする人です。仕事をするのは家族を思うこととイコールです。
 つまり、「私」(家族)を思いつつ、プロに徹して業務をこなす「業私混同」こそが一番なんです。皆さん、いかがでしょうか。