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開発事例物語
 
「アイデアを育てる考え方」 〜開発への準備 その3〜

■ 最初のアイデアは新事業・新商品の赤ちゃん
 新事業や新商品開発の始まりは、赤ちゃんが生れ落ちるのと同じです。赤ちゃんは、話すことも出来ませんし歩くことも出来ません。まして、仕事が出来るような赤ちゃんなんて居る筈はありません。しかし、何も出来ない純粋で無垢な赤ちゃんは、聞くもの見るもの、全部吸収して成長して行きます。そのスピードは大人よりも数倍速く、育てる方はとにかく嬉しく、我が子の成長に目を細めるばかりです。
 開発は、このように、赤ちゃんを育てるのと似ている作業です。しかし、残念ながら、こと開発となると、全く逆の事が起こることを、私は数多く見てきました。どんな業種でも、どんな企業でも、事業規模の大小を問わず、同じようなことが起こってしまうのです。どうしたらそのようなことが起きないように出来るかを考えてみましょう。
 アイデアが出された(生まれた)時、そのアイデアが既に成熟していて、何の付け加えるべきものが無いような、完璧なものがある筈はありません。殆どのアイデアは未熟で、場合によってはそのアイデアそのものが否定されそうになることさえあります。或いは、事業化や商品化を想定した時のあらゆるリスクを並べ立て、ダメな要因を探し回る人もいます。「今まで聞いた事が無い」。「誰も経験が無い」。とにかく、否定する言葉は山ほどあり、聞きようによっては、とにかく諦めさせるのが仕事のような人もいるくらいです。
 何故、そのようなことが起きるのか、私も最初は不思議でした。しかし、アイデアというものの持つ基本的な意味を、その人が理解しているか、そうでないかが、その要因であることに気付いてから、私の悩みはスッキリと解消したのです。それは、アイデアというものが、完成したもの、或いは、直ぐにでも事業化・商品化できるものであると思っている人が、案外多いということに気付いた時に、明確に分かった事でした。つまり、アイデアを見たり聞いたりした人が、それがもう新事業・新商品の姿であると早とちりして、変更や改善、更には別のアイデアを付加したりすることが出来ない、固定化されたものであると思う人が、実に多いということなのです。人間で例えれば、生れ落ちた赤ちゃんが大人の姿をしていて、歩き、しゃべり、仕事をしているのと同じです。
 そんな人間が居る筈はありません。
 そうです、アイデアは開発の赤ちゃんであると理解すれば、これからどう育って行くのかが問題なのであって、直ぐに何かを期待したり、ましてや直ぐに仕事をさせることなんて有り得ません。アイデアに最初に触れた時、そのアイデアが、開発の始まり、つまり新事業や新商品に育って行く最初の姿と思うかどうかが、重要な事なのです。

■ アイデアは育てて、大きくするもの
 新事業・新商品の最初が、アイデアという赤ちゃんです。その赤ちゃんを大きく元気に育てるにはどうするか。それは、人間の赤ちゃんを育てるのと同じです。泣いたりグズる赤ちゃんを母親が叱ったりしないのと同じで、少々の問題はどうでもよいことです。問題なのは、本当にそのアイデアが純粋で無垢なニーズの基によって生まれたかどうかが問題です。考案した人がニーズに気付き、自らも欲しいと欲求したものがホンモノです。しかし、行き掛かりの不純な恣意(気ままな心、自分勝手な考え)であったりすると、それは顧客の純粋・無垢なニーズである筈はありません。
 ニーズを認識し、皆がそのことに賛同したなら、後はそのニーズに対応する具体的な手段や姿を考えるだけです。赤ちゃんに色々な事を教えるように、手を取り体を支えてあげれば良いのです。時として、危険な時や間違った場合には、しっかりと理由を説明して叱れば、その子は二度と同じ事はしないでしょう。周囲の人が、本当に愛情を持って温かく見守る。そして、良かったら、とにかく誉める。誉められたことが多い人間は、本当に素直です。素直な人間は、純粋なニーズに敏感です。
 こうして、アイデアの赤ちゃんが大きくなり、具体的な新事業・新商品に育って行き、更に次のアイデアを生む人材も育つような、「開発の好循環」が始まるのです。
 アイデアを育てる作業に何のリスクがあるのでしょうか。
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