【Vol.345】ビジネスパーソンのトキワ荘

 昔、トキワ荘というアパートがありました。手塚治虫氏をはじめ、藤子不二雄(藤子・F・不二雄、藤子不二雄A)氏、石ノ森章太郎氏、赤塚不二夫氏など、カリスマとも言える超有名な漫画家が無名の頃に居住していたアパートです。彼らは売れっ子になる以前から、お互いに啓発し合いながら、そこで暮らしていました。現在は取り壊されて出版社の社屋が建っていますが、跡地であることを示すモニュメントが同社の敷地内に設置されているそうです。

 さて、このトキワ荘は漫画家を志す者にとっての「梁山泊」(英雄や豪傑が集まる所の例え)とも言えますが、このようにお互いを研鑽し合う「場」が現代のビジネスパーソンにも必要ではないか、そのような「場」をつくりたいと、私はおよそ20年前から思っていました。目指すのは漫画家ではありませんが、新しい事業や新しい商品を創りたいという志を持つビジネスパーソンが、より高みに臨もうと集まる場、です。
 私の夢でもあったその構想が、今般、実現しました。

 ご承知のように、私は「ビジネスプロデューサー養成講座」を、およそ20年前から主催してまいりました。東日本大震災の年に1回だけ休講しましたが、2018年4月に33期を数えるまでになりました。2014年には私が講師を務める「新ビジネス創出講座『ビズラボ』」(主催:リアル開発会議)も始まり、2018年5月に7期が開講しました。
 これらの講座は、行政のご支援はもとより、第三セクター的な地域の産業振興機関や日経BP社などのメディア、最近は地方自治体のご支援も頂きながら、既に1000人を超す卒業生を輩出してきました。

 開発を志す者同士が利害関係を越えてつながり、お互いに啓発し合ってより良い新事業・新商品を開発できるようにしたい――。その一心で始めた講座ですが、いま振り返ってみますと、まさにトキワ荘のような場をつくりたかったのだと思うのです。

 この講座を続ける中で私が一番心掛けてきたこと。それは受講者同士の絆と言いましょうか想いと申しましょうか、受講者の気持ちをいかにしてつなぎ、より多くの同志に広げていくかということでした。
 そして、その同志が集う場として「事業開発経営協会」という一般社団法人を設立したのです。
 この協会の目的は明快です。各講座の卒業生リストを整備し、そのネットワークを利活用するために「事業開発経営士」という資格を設け、有資格者同士の啓発を図るために引き続き勉強できるような環境をつくること、です。卒業生は同窓生であり、資格は学位と言えましょう。
 事業開発経営士は、3級で基礎を知り、2級で現場で実践できる力をつけ、そして1級は後輩に指導して事業開発経営士を養成できるようになることを目指しています。このような学びのクラスを認識することで、意見交換がさらに活発に行われるようになることも狙っています。

 利害関係のない間柄なのに、フィールドアライアンスを実践して事業を創る、ビジネスパーソンのトキワ荘。私は、その管理人です。皆さん、ぜひトキワ荘に入居ください。