【vol.286】90歳の現役社長

 久し振りに愉快な社長にお会いしました。仰ることも愉快なんですが、何より、お歳が90なんです。お見かけすると、とても90才には見えませんし、カクシャクとしてるなんて、そんな、普通の褒め言葉なんて不要で、バリバリと言っていいほど、本当にしっかりと(こう言うことが失礼なくらい)していらっしゃいます。

 クライアントのものづくりにご協力頂こうと、弊社の79才のYさんと一緒にお邪魔したのですが、90才から見れば、うちのYさんは青二才、私なんぞは子供です。仕事の話は後回し、それはそれは愉快なお時間でした。

 歳の話になって、先ず「80から歳を感じるんだよ」と仰いました。こちらが「?」という顔をすると続けて「70台は何でもないが、80になるとガクッと体力が落ちる。これは気力で何とかなるが、85になると気力では何ともならない。あちこち痛くなって自力では治らないから医者に行くと、『それだけ長生きしているのが悪い!』と医者に言われる。だから、痛いのが当たり前と思えば何とかなる。わっはっはっは」と、笑い飛ばすのですから、もう何も言えません。

 思い起こすと、私の祖母も父も長生きでしたが、90才の時に仕事なんて、考えたこともありませんでしたし、出来るとも思いませんでした。それが、この 社長は90でバリバリ。こんな方もいらっしゃるのです。私が、「余計な事かもしれませんが、後継者はいらっしゃるのですか?」と訊けば、「いるいる、弟が二人。この会社に居てずうっと同じ仕事をしているから安心だぁ」と、また笑い飛ばすのです。しかし、90才の弟さんて何歳?とも聞けませんでしたが、きっとお元気なんでしょうね。

 このお話、私にとっても本当に心強いものでした。きっと、うちのYさんにとっても同じです。日頃、出来る限り仕事を続ける事が大切とは言っている私ですが、目の前にそのお手本が居られるなんて、本当に嬉しいのです。しかも、お見かけするとこの会社、評価するようで失礼ですが、ちゃんと経営もしっかりとされているようで、工場を見学させて頂くと、従業員の皆さんの対応も礼儀正しく素晴らしいのです。

 きっと、90才の社長が楽しそうに働くその背中を見ながら、授業員の方々も楽しくなるのではないでしょうか。「この会社でしっかりと働けば、出来る限りはこの会社で働ける」と思って居られるのでしょう。定年制度があるのか無いのか知りませんが、是非とも従業員の方々もいつまでも、それこそ90、100才になっても仕事が出来る会社になって欲しいと思った次第です。

 よく考えますと、この会社のように皆が元気で働ける環境をつくることが、今の我が国が抱える様々な問題を解決する、最良の方法ではないかと思うのです。

 想像してください、例えば私の会社です。私が90才の時、秘書のFさんはまだまだ働き盛り。一般企業の定年年齢は過ぎましたが、バリバリ・ガミガミで、相変わらずの超ハードなスケジュールを、私に課していることでしょう。他の社員の方は、皆さん独立(弊社コンサルタントは全員が弁理士・弁護士なので)して、定年ナシで活躍して居られることでしょう。

 えっYさん? ははは、大丈夫ですよ。たかが107才ですよ。まあ、ヨタヨタとはしているでしょうが、頭は元気で相変わらずブツブツ言いながら、私と一緒に出張に出掛けていることでしょう。

 さて今回、90才の現役社長はYさんと私にとても大きな元気をくれました。だから皆さん、私達も大いに元気で長生きをして生涯現役でやろうではありませんか。きっときっと、少子高齢化社会で起こる様々な問題は、超高齢就労者が解決するのですよ。

 ところで、本音でお前は幾つまでやるつもりかですって? ははは、BP通信218号で書いたじゃありませんか。120歳、ホントですよ、はっはっは。(大笑!)