【Vol.265】採算より採賛

 よく、採算度外視と言います。儲けはいいから、とにかくやろう。或は、社会貢献的な行動を取る時に、よく使う言葉です。採算とは、事業や商売を行う際に利益があることですから、それを度外視するということは、例え利益が出ようが出まいが、それを問題にしない事です。

 しかし最近、いくら採算度外視と言ったところで、そもそも、採算が合うような事、それ自体が少なくなってきたような感じです。例えば、公共工事などは、入札に参加する企業も少なくなってきたようですし、応札しても、それこそ採算が合わないので、辞退する企業が続出しているとか。どうも、施主である自治体も、それを請け負う企業も、とにかく安く安くと、結局は、採算そのものが、初めから度外視されているようです。

 このような中で、最初からお金をのことを考えずに、とにかく良いことをしよう、そんな動きが出てきたようです。

 例えば、東日本大震災の復旧や復興のお手伝いをしているボランティアは分かるのですが、被災地に自主的に移転した企業があるようです。ボランティアは、最初から採算度外視でしょうが、企業が自主的に被災地に移転するメリットなど、一見して有りそうもないのに、敢えて移転とは、一体、何が目的か、最初はそう思ってしまいました。

 でも、その企業は、少しでも被災地での雇用を生み出し、その地域に納税することで役立つことが出来ると移転したのだそうで、何とも頭の下がる思いです。多分、首都圏から移転する費用を考えてみても、採算が合う訳はないでしょうし、そもそも、新天地に行けばゼロからのスタート。工場や社屋の費用もそうですが、それまでに築き上げた知名度もまた、ゼロから積み上げるしかありません。

 しかし、よくよく考えてみると、お金的には何のメリットもない、或はマイナスなのかもしれませんが、移転することによって、それを知った多くの方々が、その企業を称賛することになり、それまで以上にファンを増やす結果になったことでしょう。つまり、その経営者がそこまで考えたかは知りませんが、採算の算、より、賛同の賛を採ったことは明らかです。

 如何でしょうか、私達は、いつも何かをする時に、先に採算を考えることが多いのではないでしょうか。いえ、多いどころではなく、必ずと言ってもいいかもしれません。何をやるにも、先ずはお金で換算し、いくら掛かるか、そしていくら儲かるのか、それを優先して考えてしまうのではないでしょうか。

 世知辛い世の中に、そんな悠長なことでは生き残れないと言われるかもしれません。しかし、敢えて採算を考えず、賛同の採賛を考えるとき、結果として採算も合うのなら、先に採賛を選ぶ方がいいのではないでしょうか。

 なにか、禅問答のようになってしまいましたが、これからは、採算より採賛。私はそうしようと思うのです。

 ところで、今回のBP通信は採賛が合うのか、ですって? そんな事は知りませんよ。なんせ私、1対49(BP通信~242号)ですからね。(笑)