【Vol.262】規制の陳腐化

 最近、笑えないような変な話がありました。ところが、よく聞いてみると、結局は笑うしかなかったのですが、この国の法律・規制、やはり変なのです。

 実は、圧電素子を利用して電気をつくり、その電気で照明や通信をするという、発電パネルの開発をお手伝いしているのですが、お役所に問い合わせたところ、その発電パネルを発電所とみなすと言われたのです。

 このパネル、床に置いて踏むと、パネルに内蔵された圧電素子が歪んで発電するという原理なのですが、念のために、電気用品安全法(電気用品の安全確保について定められている法律)を確認しようとお役所に尋ねたのでした。それがなんと、それは発電所の届け出が必要であると言われたのです。

 原理をお分かりの方は、多分、お笑いになるでしょう。圧電素子を入れたパネル、どんなに踏んでも電流は数ミリアンペア以下、とても発電所などという装置ではありません。確かに、電圧は数千ボルトにはなりますが、電流は数ミリアンペア以下、そうそう、あの電子ライターの着火用のピカッと火花が出る程度です。

 それを、発電所。どんなに大袈裟に考えても、何で発電所なんでしょうか。でも仕方ありません、お役所のご担当も笑いながら、30ボルト以上の発電量ならば、発電所としての許可・認可が必要だと言うのです。

 それなら、子供の靴に仕込まれて、歩くとピカピカ光る靴や、そうそう、その電子ライターも発電所ということになるではありませんか。ご担当の方も、訊かれればそう答えるしかないので、黙ってやってもらえば、それは知りませんと仰るのですが、これは、やはり変な規制ではないでしょうか。

 最近、六重苦(高い法人税率、製造業派遣の原則禁止などの労働規制、自由貿易協定への対応の遅れ、温暖化ガスの25%削減、歴史的な円高、電力問題のことです)で、企業は益々厳しい経営環境に置かれているのはご承知の通り。全部が全部、そのセイではありませんが、やはり、こんなバカげた規制があるのも影響していると思った次第です。

 本来、規制というのは、事業者に危険や間違いがあってはいけないと、規律をつくって制限することですが、これでは、せっかくのアイデアや開発の芽を摘むことになり、多くの事業チャンスを潰してしまいます。中には、規制の網をかいくぐり、非合法な事業を企てる輩もいるのは事実ですが、もっと柔軟に、法律や基準を運用して頂きたいと思うのは私だけではないでしょう。

 これだけ、社会情勢や開発環境が目まぐるしく変わる中で、規制も陳腐化するのは当たり前。何も、憲法改正論議をする訳ではありませんから、陳腐化した法規制はドンドン改正したらいいのではないでしょうか。

 いつの世のも、悪いヤツは悪い事をするもので、そして、その悪いヤツが絶える事は無い、そのように石川五右衛門も言ってはいますが、これからは、いいヤツの為のことも考えて欲しいと思うのです。

 …開発や浜の真砂は尽くるとも世に法規制の壁は絶へせじ…なんちゃって。