【Vol.258】開発のガバナンス

 この仕事をはじめて41年になりますが、今まで、風俗関連事業だけはご縁が無かったと言ってきたのですが、実はもう一つ、お付き合いの無かった業種がありました。それは法曹界、つまり、裁判官や検察官、弁護士さんの世界です。

 しかし最近、その法曹界のお手伝いをする事になりました。50人の弁護士さんを擁する法律事務所なのですが、まさか、浅学非才を絵に描いたような私にご縁があるとは思いませんでした。ある方のご紹介で代表先生とお会いしたのですが、まさに波長が合うとはこのようなことなのでしょう、たちまち意気投合、開発の話になり、ご提案したことに興味を持たれ、そのままご契約を頂いた次第です。

 弁護士事務所の新事業・新商品開発など、どうするのかと思われるかもしれませんが、代表先生のお考えは、係争になってからの仕事より、そうならぬように、つまり、“転ばぬ先の杖”的な仕事の出来る法曹界にしたい、そして、より多くの弁護士が、前向きな案件で働けるようにしたいと仰るのです。

 私ごときに出来るのかどうか、大いに心許ないのは百も承知ですが、代表先生の一言にピクッとしたのです。それは、コーポレート・ガバナンスという言葉でした。

 コーポレート・ガバナンス(企業統治)という概念、最初は1960年代のアメリカから始まったそうですが、要するに、企業経営の指針として、非倫理的・非人道的な行動をしてはならないという考え方が、その後、次第に粉飾決算など、企業の不祥事を防ぐという意味でも使われるようになったのだそうです。今では、コーポレート・ガバナンスの目的は、企業の不祥事を防ぐということと、企業の収益力を強化することの2点が強調されていますが、このお話、私にとっては素直に理解できるお話だったのです。

 いつか、このBP通信にも書きましたが、環境・安全・コンプライアンスという考え方が、これからの企業経営において、とても大切なことであると言ってきた私、まさにコーポレート・ガバナンスは、より解り易い考え方ではないでしょうか。

 そのコーポレート・ガバナンスの第一人者である代表先生が、これから、この考え方を多くの企業に広め、そして、コーポレート・ガバナンスによって企業の収益力を高めようと仰ることに、私は大いに感動し、些かでもお役に立ちたいと思ったのでした。

 円高ドル安が続く中、企業の収益力は、ある意味、自助努力では如何ともし難いような状況になっています。生き残る為にはなりふり構わず、それは仕方の無い事かも知れませんが、生き残る為にと言いながら、してはいけない事をしてしまう危険性に、私たちはいつも曝されているのが現実です。

 多くの優良企業が、先行きが不透明になり、焦るあまりに不祥事を起こし、結果、倒産という最悪の事態に陥る悲劇を、私たちは、一体、何回見て来たのでしょう。まして、開発を焦るあまり、もしも、コーポレート・ガバナンスにもとるような事をしたなら、それこそ奈落の底に落ちてしまうのです。

 如何でしょうか、開発のガバナンス。私たちは、いまこそ原点に立ち返り、正しい開発を進めながら、この閉塞感を打ち破るしかないのです。