【Vol.256】お別れ

 先日、大変お世話になった方のお葬式に参りました。もう14年前になりますでしょうか、広島地域における、クライアント第一号になってくださった会社の社長さんです。

 家族葬という事で、ご家族だけでお別れをされた後、今度のお別れの会となったのですが、会場に着いて、本当に驚きました。何と、会葬者が2千人を超えていたのです。私も数多くのお葬式に参りましたが、これだけのお葬式はありませんでした。

 百数十名ほどの社員総出の、手作りのお葬式でもありました。皆が、一丸となって切り盛りする姿、それはこの会社の風土でもあり、故人のご仁徳の為せるところです。

 先ず、壇上のお写真に感動いたしました。何と表現したらよいか分からないほど、素晴らしいお写真がありました。私が幾度となく諭され、或はご指導を受けた時の、その優しいお顔、そのままのお写真が壇上にあったのです。思わず、“こんにちは、いつもお世話になります!”と、ご挨拶をしてしまうような、いつものお顔が、私を優しく迎えてくれました。

 想い返せば、本当に長いお付き合いをさせて頂きました。お酒は一滴も飲めないのに、夜のお誘いを受け、私に合わせるかのように、まるで酒豪のように振る舞われたサービス精神とお心遣いの素晴らしさ、唯々、恐縮したのを覚えています。

 また、コンサルタントの私に、こうしたらいい、ああしたらと、まるで、私がコンサルティングを受けているよう時もありました。お歳は、私より五歳上でしたが、私にとっては兄のような存在でもあり、父のように感じる時もありました。それは、私が甘えさせて頂いた時であり、クライアントとコンサルタントの関係を越えた、今思えば、本当に失礼ながら、契約関係を無視させて頂いた瞬間でもありました。

 私にとって40代後半、一番の働き盛りに出会えた、本当に素晴らしいクライアントでありました。正直な話、ウキウキとした気持ちで行くクライアントがあるなんて、まさにコンサルタント冥利に尽きるのではないでしょうか。

 傍(はた)で見ていて、厳しい時期もありました。しかし、バブルの崩壊やリーマンショックショックの荒波をまともに受けながらも、弱音を吐かない、毅然とした経営者でもありました。ウチも辛いがみんなも辛い。だから、特別なことではないのだよと、笑いながらお話しされたのを、今でも覚えています。その豪胆さの一方で、厳しい局面を乗り越える為の一手を、顔色一つ変えず、粛々と指示されている姿は、まさに名経営者でした。

 会社がNHKのクローズアップ現代に取り上げられた時、画面に映し出されたお顔を見て、言いようのない感動を覚えました。見終わって、改めて、この会社の素晴らしさと、経営者としての素晴らしさを、再確認いたしました。

 壇上のお写真を見上げて、献花しながら、次から次に色々な事が、まさに走馬灯のように想い出されました。そして、何故か、悲しい気持ちが無くなりました。

 それはそれは、愉快な人生だったに違いありません。先代から引き継いだ紡織業を転換し、一代で電機と精密機械や模型ヘリコプターのメーカーに育て上げ、地域経済界の重鎮として、ニュービジネス協議会や商工会議所のトップを務められ、まさに、公私ともにお忙しくも充実した人生を送られたのです。私ごときが申し上げる話ではないでしょうが、これほどの人生、それはまさに、最高にお幸せだったのではないでしょうか。

 もしも、あの世というものがあるのなら、きっと、あの世でも大活躍をされるのでしょう。そして、あの世でも、きっとお忙しいのでしょうが、お時間があったなら、現世の私たちを、ちょっとでも見守ってくださいね。

 その時はまた、存分に、甘えさせて頂きたいと思います。

 松坂敬太郎 様、本当に、ほんとうに有難うございました。

合掌