【Vol.237】腕まくり

 新しいことを始めるときに、腕まくりをすることがあります。この、腕まくりをするようなとき、それはその時点で、50%くらい成功している証ではないでしょうか。

  屁理屈ではありませんが、ねじり鉢巻きとは、ちょっと違うと思うのです。言葉のアヤでもありません。腕まくりとねじり鉢巻きの違い、それは、これからやることに対する期待や情熱と言いましょうか、向き合う姿勢とパワーの掛け方に大きな差があるのです。
 皆さんは腕まくりするときに何か悲壮感はありますか、無いでしょう。それは、これから始まるプロジェクトなり仕事なり、お稽古ごと、練習、料理など、いずれもヤルゾという漲(みなぎ)るような気持ちがあるとき、腕まくりをするのではないでしょうか。私も講演するときはまさに腕まくり状態、さあやるぞ! と気合が入るものです。
 対して、ねじり鉢巻きは、受験勉強を徹夜でやらなければいけないときや、負けられない試合のときなどにするものです。仕事でも、納期に間に合わせるためにとにかくやる、コストを合わせる為に何が何でも…的な、どちらかというと悲壮感を伴うときに(実際はしないまでも)鉢巻きをするような感じではないでしょうか。

 言葉尻を捉えて細かいことを言うな、そう叱られるかもしれません。しかし、気になることは、ねじり鉢巻き的場面はよく見るのですが、腕まくりは、案外、私たちの身近に見ることが少なくなってしまったことなのです。逆に言えば、悲壮感が先になる事の方が多いように思うのです。
 振り返ってみると、私の若い頃、ほとんど毎日が腕まくりの日々でした。さあやるぞ、何でもやるぞと、毎日がヤル気満々、チャレンジの連続だったような気がします。
 それが、一体いつの頃からでしょう、やればやるほど厳しい状況になり、腕まくりじゃなくて、ねじり鉢巻きで頑張る毎日。それも、その鉢巻きがギュウギュウきつくなるばかりです。頑張っても頑張っても、報われない日が続くなんて、一体、いつから、そしていつまで続くのでしょうか。

 そんな、先行き不安ばっかりの中で、最近、久々に“腕まくり”に出会ったのです。

 ある開発をお手伝いして、とうとう全国展開しようということになりました。その案件は、地方の、それもどちらかというと首都圏からは遠く離れ、従来の常識では不便、あるいは不利な立地にあると言ってもいい地域で発案されたものです。
 しかし私は、不便や不利といった、地勢的な条件でビジネスの強弱がある訳はなく、そのビジネスモデルの優位性こそが競争力と言い続け、全国からその地域に、まるでメッカに巡礼が集まるようにしようと考えたのです。

 そしてその第一回の事業説明会。首都圏から参加した人が言ったこと、それが腕まくりなのです。「いやあ、久しぶりに“さあやるぞ”と腕まくりしたい気持ちになりました。是非、この事業を一緒にやらせてください」と、そう言われたのです。

 こんなに嬉しいことはありません。勿論、クライアントは喜んでくれましたし、私は、その一言でこれからの成功を確信したのです。久しぶりの腕まくり。私も腕まくり状態ですし、本当に、これからが楽しみなのです。

 如何でしょうか皆さん、全国腕まくり連合会を立ち上げませんか。